【知らないと100万円損する⁉】退職金の手取りを最大化する「退職所得控除」の仕組みを40代が徹底解説

「長年勤め上げた会社を退職する時、まとまった退職金がもらえる」

多くの会社員にとって、退職金は輝かしいセカンドライフを送るための大切な原資であり、一種の夢のようなものでしょう。私の周りの40代の友人たちと話していても、「退職金で住宅ローンを完済するんだ」「夫婦で世界一周旅行に行きたいな」なんて話で盛り上がります。

しかし、ここで一つ、非常に重要な質問をさせてください。

「その退職金、本当に満額もらえると思っていますか?」

実は、給料やボーナスと同じように、退職金にも税金(所得税・住民税)がかかるという事実を、意外と知らない人が多いんです。そして、その税金の仕組みを知っているか知らないかで、手取り額が100万円以上変わってしまうことだって、決して大げさな話ではありません。

でも、安心してください。国は、長年社会に貢献してきた私たち会社員のために、非常に強力な税金の優遇制度を用意してくれています。

それが、この記事のテーマである**「退職所得控除」**です。

こんにちは。40代の会社員です。最近、老後のお金のことを真剣に考えるようになり、ファイナンシャルプランナーの友人に色々と教えてもらっています。今日は、その友人から教わった「退職金と税金」の、目からウロコが落ちるような話を、皆さんとシェアしたいと思います。

この記事を読み終える頃には、あなたは退職金にかかる税金の仕組みを完全に理解し、大切な退職金の手取りを最大化するための具体的な方法を知ることができるはずです。少し長くなりますが、あなたの未来を守る大切な知識です。ぜひ、最後までお付き合いください。


第1章:そもそも退職金って、どんなお金?

本題に入る前に、少しだけ退職金の基本についておさらいしましょう。

退職金とは、その名の通り、会社を退職する際に支払われるお金のことで、「退職手当」や「功労金」といった呼び方をされることもあります。これは、会社から従業員への「長年の勤務、お疲れ様でした。そして、ありがとう」という感謝のしるしとも言えるでしょう。

もらい方には、大きく分けて2つのタイプがあります。

  • 退職一時金:退職時に一括でまとまった金額を受け取る方法。
  • 退職年金:退職後、一定期間または生涯にわたって、年金形式で分割して受け取る方法。

どちらを選ぶかは会社の制度によりますが、多くの人がイメージするのは、やはり「一時金」ではないでしょうか。

ここで重要なポイントは、退職金(特に一時金)は、毎月の給料に比べて税金が非常に優遇されているという点です。なぜなら、退職金は長年の勤労に対する報償であり、老後の生活を支えるための大切なお金だから。それに一度にドカンと課税してしまうと、生活が立ち行かなくなってしまいますよね。そこで国は、「退職所得」という他の所得とは別の特別なカテゴリーを作り、税負担が軽くなるように設計してくれているのです。

そして、その税負担を軽くするための中心的な役割を果たすのが、次にご紹介する「退職所得控除」なのです。


第2章:最強の節税シールド、「退職所得控除」とは?

いよいよ本日の主役の登場です。

「退職所得控除(たいしょくしょとくこうじょ)」

なんだか漢字が並んでいて難しそう…と感じるかもしれませんが、心配は無用です。一言でいうと、これは**「退職金のうち、この金額までは税金をかけませんよ」という、国が定めた非課税の枠**のこと。

私はこれを、**「最強の節税シールド(盾)」**と呼んでいます。なぜなら、その効果が絶大だからです。

給料の場合、「給与所得控除」というものがありますが、退職所得控除はそれとは比べ物にならないほどパワフル。このシールドのおかげで、多くの人の退職金にかかる税金が、驚くほど少なくなったり、場合によっては**完全にゼロ(0円)**になったりするのです。

この最強のシールドが、どのように計算され、どれほどの効果を発揮するのか。次の章で、具体的に見ていきましょう。


第3章:【完全図解】退職所得控除の計算方法をマスターしよう

「計算」と聞くと、アレルギー反応が出てしまう人もいるかもしれませんが、安心してください。計算方法は驚くほどシンプルで、たった2つのステップを覚えるだけで、誰でも簡単に計算できます。

ステップ1:勤続年数で控除額(非課税枠)が決まる

まず、あなたの「節税シールド」がどれくらいの大きさになるかは、**「勤続年数」**によって決まります。長く勤めれば勤めるほど、シールドは大きく、強固になります。

計算方法は、勤続年数が20年を超えるかどうかで、2つのパターンに分かれます。

  • パターンA:勤続年数が20年以下の場合$$ 40万円 \times 勤続年数$$※計算結果が80万円未満の場合は、80万円になります。
  • パターンB:勤続年数が20年超の場合$$ 800万円 + 70万円 \times (勤続年数 – 20年)$$

具体例を見てみましょう。

  • 勤続10年の人 → 40万円 × 10年 = 400万円
  • 勤続20年の人 → 40万円 × 20年 = 800万円
  • 勤続30年の人 → 800万円 + 70万円 × (30年 – 20年) = 1,500万円
  • 勤続38年の人 → 800万円 + 70万円 × (38年 – 20年) = 2,060万円

いかがでしょうか。勤続38年ともなると、退職金のうち2,060万円までが非課税になるのです。これが「最強」と言われる所以です。

ステップ2:課税対象額を半分にする魔法

驚くのはまだ早いです。退職所得には、さらに強力な税優遇があります。

仮に、退職金が控除額を上回ったとしても、その超えた部分の金額を、さらに半分にしてから税金計算をするというルールがあるのです。

計算式はこうです(ドン!)。

$$課税退職所得金額 = (退職金の額 – 退職所得控除額) \times \frac{1}{2}$$

この「× 1/2」がとてつもなく大きい。例えば、控除額を超えた金額が300万円だったとしても、税金計算の対象になるのは、その半分の150万円だけで済むのです。これは、他の所得にはない、退職所得だけの特別な措置です。

この2つのステップを理解すれば、もう退職金の税金は怖くありません。次の章では、具体的な金額を使って、手取り額がどうなるのかをシミュレーションしてみましょう。


第4章:【年代別】リアルな手取り額シミュレーション

では、実際にどれくらい税金が変わるのか、具体的なケースで見ていきましょう。ここでは、所得税・住民税の合計税率を仮に20%として計算してみます。

ケース1:勤続15年、退職金500万円(30代後半~40代の転職を想定)

  1. 退職所得控除額の計算(パターンA)40万円 × 15年 = 600万円
  2. 課税退職所得金額の計算退職金500万円は、控除額600万円の範囲内に収まっています。したがって、課税対象となる金額は0円です。→ 結果:税金は0円。手取りは満額の500万円。

ケース2:勤続25年、退職金1,500万円(40代後半~50代を想定)

  1. 退職所得控除額の計算(パターンB)800万円 + 70万円 × (25年 – 20年) = 800万円 + 350万円 = 1,150万円
  2. 課税退職所得金額の計算退職金1,500万円は、控除額1,150万円を上回っています。(1,500万円 – 1,150万円) × 1/2 = 350万円 × 1/2 = 175万円税金計算の対象となるのは、たったの175万円です。仮に税率20%とすると、税額は約35万円。→ 結果:手取りは約1,465万円。もしこの控除がなければ、1,500万円全体に高い税率がかかり、手取りはもっと少なくなっていたでしょう。

ケース3:勤続38年、退職金2,200万円(定年退職を想定)

  1. 退職所得控除額の計算(パターンB)800万円 + 70万円 × (38年 – 20年) = 800万円 + 1,260万円 = 2,060万円
  2. 課税退職所得金額の計算(2,200万円 – 2,060万円) × 1/2 = 140万円 × 1/2 = 70万円課税対象は、わずか70万円です。仮に税率10%(課税所得が低いので税率も下がります)とすると、税額は約7万円。→ 結果:手取りは約2,193万円。2,200万円という大金を受け取っても、税金はほんのわずか。これこそが退職所得控除の威力なのです。

このように、日本の平均的な退職金額であれば、多くの場合、税金はかからないか、かかったとしてもごくわずかで済むことがお分かりいただけたかと思います。


第5章:要注意!退職所得控除が使えない?知っておくべき落とし穴

ここまで退職所得控除の素晴らしい点ばかりをお伝えしてきましたが、いくつか注意すべき「落とし穴」も存在します。特に、**iDeCo(個人型確定拠出年金)や企業型DC(企業型確定拠出年金)**に加入している方、短期間で転職を繰り返している方は要注意です。

最大の注意点は、**「iDeCoや企業型DCを一時金で受け取った場合、その分も退職所得として扱われ、退職所得控除の枠を使ってしまう」**ということです。

例えば、60歳でiDeCoを一時金で受け取り、65歳で会社の退職金を受け取る、というケースを考えてみましょう。この場合、先のiDeCo受け取り時に、すでに退職所得控除の枠を使っています。そのため、後の会社の退職金を受け取る際には、控除の枠が減ってしまったり、リセットされるまでの期間(前回の退職から一定期間)が影響したりすることがあります。

このルールは少々複雑で、「前年以前4年以内」や「前年以前19年以内」(2022年4月以降)といったキーワードが絡んできます。詳細な説明は割愛しますが、**「異なる時期に複数の退職一時金を受け取る可能性がある人は、受け取る順番やタイミングを慎重に検討しないと、本来払わなくていい税金を払うことになるかもしれない」**という点だけは、強く覚えておいてください。

心当たりがある方は、会社の担当部署や、税務署、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に一度相談してみることを強くお勧めします。


第6章:「一時金」vs「年金」どっちで受け取るのが正解?

最後に、多くの人が悩む「受け取り方」の問題について触れておきましょう。会社の制度によっては、退職金を「一時金」で一括で受け取るか、「年金」として分割で受け取るかを選べる場合があります。

どちらが「正解」かは、その人のライフプランや価値観によりますが、「税金」という観点だけで見れば、一般的には「一時金」で受け取る方が有利になるケースが多いです。

  • 一時金のメリット
    • 税制優遇が最大:これまで説明してきた「退職所得控除」と「1/2課税」という強力な優遇措置をフル活用できる。
    • 社会保険料への影響なし:受け取った一時金によって、翌年の国民健康保険料などが上がることはない。
  • 年金のデメリット
    • 税制優遇が弱い:年金は「雑所得」という扱いになり、退職所得控除は使えず、「公的年金等控除」が適用されるが、優遇度は低い。
    • 社会保険料が上がる:年金収入が増えると、その分、国民健康保険料や介護保険料の負担が増える可能性がある。

もちろん、年金には「毎月決まった額が振り込まれる安心感」や「運用を会社に任せられる」といったメリットもあります。しかし、手取り額を最大化したいのであれば、退職所得控除の恩恵を最大限に受けられる「一時金」での受け取りが、基本的には最も賢い選択と言えるでしょう。


まとめ:未来の自分のために、今できること

今回は、退職金の手取りを最大化する「退職所得控除」について、詳しく解説してきました。

  • 退職金には税金がかかるが、「退職所得控除」という強力な非課税枠がある。
  • 控除額は「勤続年数」で決まり、長く勤めるほど有利になる。
  • 控除額を超えても、超えた額の「半分」にしか税金がかからない。
  • iDeCoなど他の退職一時金を受け取る際は、タイミングに注意が必要。
  • 税金面だけを見れば、「一時金」で受け取るのが最も有利。

この制度は、国が私たち会社員のために用意してくれた、いわば**「ご褒美」のようなプレゼント**です。このプレゼントをありがたく、そして賢く受け取るためには、正しい知識が不可欠です。

この記事を読んで、「なるほど!」と思ってくださったなら、ぜひ今日からできることを始めてみてください。それは、ご自身の「勤続年数」を改めて確認すること、そして会社の「退職金規程」を取り寄せて、自分の退職金がどのように支払われるのかを確認することです。

その小さな一歩が、あなたの輝かしいセカンドライフを盤石なものにするための、大きな一歩となるはずです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

【免責事項】

本記事は、税金に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の個人に対する税務上の助言を行うものではありません。税法の解釈や適用は、個々の事実関係や状況により異なります。また、税制は将来変更される可能性があります。具体的な税務上の判断を行う際には、必ず税理士や所轄の税務署などの専門家にご相談ください。

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