【2025年保存版】退職金とiDeCo、受け取り順を間違えると100万円損する?「出口戦略」完全講義

「老後のために、iDeCoや個人年金を積み立てています」 最近、同世代の友人と飲むとそんな話をよく聞くようになりました。みんな偉いですよね。将来のためにコツコツ準備している。

でも、ここだけの話、「貯め方」ばかり気にして、「受け取り方」を考えていない人が驚くほど多いんです。

実は、退職金やiDeCo、個人年金は、受け取るタイミングや順番を1つ間違えるだけで、税金が数十万、場合によっては100万円単位で変わってしまうことをご存知でしょうか?

特に注意が必要なのが、

  • 55歳前後で役職定年や早期退職を考えている人
  • 「個人年金は子供に残してあげよう」と考えている人
  • 定年後はアルバイトをしながら年金をもらおうと思っている人

これらに当てはまる場合、知識がないと「税金の地雷」を踏む可能性が高いです。

今日は、知らないと絶対に損をする**「退職金と個人年金の出口戦略」**について、2026年に予定されている法改正の噂も含め、徹底的に解説します。


1. なぜ「出口」で税金が変わるのか?

まず、大前提として知っておいてほしいのが、日本の税制において**「退職金」として受け取るお金は、最強レベルに優遇されている**ということです。

給料やボーナスには容赦なく税金がかかりますが、長年勤め上げたご褒美である退職金には、「退職所得控除」という最強の守りが用意されています。

退職所得控除の計算式(おさらい)

  • 勤続20年以下: 40万円 × 勤続年数
  • 勤続20年超: 800万円 + 70万円 × (勤続年数 – 20年)

例えば、30年勤めた会社なら、 800万円 + 70万円 × 10年 = 1,500万円 までは、税金がかかりません(しかも、超えた分もさらに半分にしてから課税されます)。

「じゃあ安心だね」と思いましたか? ここに大きな落とし穴があります。

この「退職所得控除」という大きな器(枠)は、会社の退職金だけでなく、iDeCo(個人型確定拠出年金)の一時金受け取りでも共有するルールになっているんです。

つまり、「会社の退職金」と「iDeCo」を同じタイミングで受け取ると、この控除枠を食い合ってしまい、結果として税金が激増する可能性があるのです。


2. iDeCoと退職金、どっちが先?「運命の分かれ道」

iDeCoと会社の退職金、両方ある場合、どう受け取るのが正解なのでしょうか? キーワードは**「5年(もうすぐ10年)」「19年」**です。

パターンA:iDeCoを先に受け取る場合(おすすめ!)

現在、iDeCoを「一時金」として先に受け取り、そのあと会社からの退職金を受け取る場合、5年以上空ければ、それぞれの控除枠をフル活用できるというルールがあります(※2025年時点)。

これを「5年ルール」と呼びます。 iDeCoを受け取ってから5年(正確には前年以前4年内)経過していれば、会社の退職金を受け取る際、勤続期間が重複していないとみなされ、退職所得控除がリセットされて満額使えます。

【黄金のスケジュール例】

  • 60歳: iDeCoを一時金で受け取る(iDeCoの加入期間に応じた控除枠を使用)
  • 65歳: 定年退職し、退職金を受け取る(30年勤続分の控除枠1,500万円をフル使用!)

これが、現状もっとも税金を安く抑える王道パターンです。

パターンB:退職金を先に受け取る場合(要注意!)

逆に、60歳で会社の退職金を先に受け取り、あとからiDeCoを一時金で受け取る場合。 これには非常に厳しい**「19年ルール」**が適用されます。

退職金を受け取ってから19年以内にiDeCoを受け取ると、「過去に退職控除を使った期間(勤務期間)」と「iDeCoの積立期間」が被っている分は、**控除額から差し引かれてしまう(使えない)**のです。

つまり、退職金を先にもらってしまうと、後でもらうiDeCoの一時金にかかる税金がドカンと増える可能性が高い。「退職金先、iDeCo後」は、一時金で受け取る限り、税制上かなり不利な選択肢です。


3. 【55歳早期退職】ここに気をつけて!企業型DCの落とし穴

最近ご相談が多いのが、「55歳で役職定年や早期優遇退職をして、退職金をもらうケース」です。 ここで最大の壁となるのが、会社で加入していた**「企業型DC(確定拠出年金)」**の扱いです。

「会社を辞めたら、退職金と一緒にDCのお金ももらえるんでしょ?」 と思っているなら、それは大きな間違いです。

① 「60歳ロック」の壁

DC(企業型)は、原則として60歳になるまで引き出すことができません。 55歳で退職した場合、以下の手続きが必要です。

  1. iDeCo(個人型)への「移換」手続きが必須 会社を辞めてから6ヶ月以内に、企業型DCの資産を、自分で開設した「iDeCo口座」に移す(移換する)必要があります。これを忘れると、国民年金基金連合会に自動的に移され、手数料だけ引かれる「仮置き状態」になり、運用もできず大損します。
  2. 60歳まで「指をくわえて待つ」 iDeCoに移した後も、引き出せるのは最短で60歳です。つまり、55歳で退職金(現金)は入りますが、DCの資産は5年間「お預け」状態になります。

② 「19年ルール」の直撃を受ける

ここで問題になるのが、先ほどの「19年ルール」です。

  • 55歳: 会社の退職金を受け取る(勤続30年分の控除枠を使い切る)。
  • 60歳: iDeCo(元DC)を受け取る。

この場合、退職金受け取りから「5年」しか経っていません(19年以内)。 そのため、60歳で受け取るiDeCo(一時金)には、「退職所得控除」がほとんど使えず、利益だけでなく元本を含めた受取額全体に対してガッツリ税金がかかる可能性が高いのです。

③ 解決策は「年金受取」に逃げること

このケース(55歳で退職金受給済み)の場合、60歳で受け取るiDeCo(元DC)は、「一時金」ではなく「年金形式(分割払い)」で受け取るのが賢い選択です。

年金形式で受け取れば、退職所得控除ではなく、次に紹介する**「公的年金等控除」**が使えるため、税金を大幅に抑えられるからです。


4. 「年金受取」と「バイト」の最強の組み合わせ

iDeCoやDCを「一時金(一括)」ではなく「年金(分割)」で受け取る場合、税金の計算ルールが変わります。これを理解すると、定年後の働き方の選択肢が広がります。

「公的年金等控除」というもう一つの守り神

年金形式で受け取る場合、**「公的年金等控除」**という枠が使えます。 これは、「最低でもこれだけは非課税にしてあげる」という枠です。

  • 60歳〜64歳: 年間 60万円 まで非課税
  • 65歳以上: 年間 110万円 まで非課税(公的年金含む)

もし、55歳退職のケースで60歳からiDeCoを受け取るなら、「年間60万円(月5万円)」ずつ受け取る設定にすれば、税金はゼロになります。(※他に年金がない場合)

アルバイト収入とは「枠」が別!

「年金をもらいながらアルバイトをすると、税金が高くなるのでは?」と心配する方がいますが、実は逆です。

  • アルバイト収入: 「給与所得控除」(最低55万円)が使える。
  • 年金(iDeCo): 「公的年金等控除」(最低60万円)が使える。

この2つの控除は**「ダブル」**で使えます。 つまり、60代前半の方なら、 「iDeCo年金60万円 + バイト年収100万円 = 合計160万円」 の収入があっても、それぞれの控除と基礎控除を引けば、所得税はほぼゼロにできるのです。


5. 「民間の個人年金保険」は別腹だが、贈与に注意!

ここで、生命保険会社などで加入している「民間の個人年金保険」についても触れておきましょう。

税金がかかるのは「利益」だけ

iDeCoやDCは「受取額全額」が課税計算の対象ですが、民間の個人年金は、**「利益分(受取額 - 払込保険料)」**にだけ税金(一時所得)がかかります。 しかも、利益が50万円以下なら非課税です。

ですので、民間の個人年金は、退職金控除の枠を気にせず、資金が必要なタイミングで柔軟に使ってOKです。

【危険】子供名義に変えるのは絶対NG!

よくある失敗が、「税金対策のつもりで、受取人を子供の口座にする」ことです。これは絶対にやめてください。

  • 契約者(保険料負担者):
  • 受取人:

この形にすると、税金の種類が「一時所得(安い)」から**「贈与税(高い)」に変わります。 しかも、「増えた利益分」だけでなく「受け取った全額」**に対して贈与税がかかります。

例えば500万円の満期金なら、一時所得なら税金数万円で済むところが、贈与税だと約50万円も取られる可能性があります。 子供にお金を渡したいなら、親が受け取ってから、毎年110万円ずつ現金で贈与(暦年贈与)するのが正解です。


6. 【緊急】2026年から「5年ルール」が「10年ルール」に?

最後に、これから出口戦略を考える人が絶対に知っておくべきニュースです。 政府の税制調査会などで議論が進んでおり、2026年(令和8年)以降、iDeCoと退職金の間の「5年ルール」が「10年ルール」に延長されることがほぼ確実視されています。

「iDeCoを先に受け取って、会社の退職金への影響を消すには、間を10年以上空けないといけない」というルール変更です。

もしこれが適用されると、60歳でiDeCoを受け取ったら、70歳まで会社の退職金を(満額控除で)受け取れないことになります。

対策としては:

  1. 2025年中にiDeCoを受け取ってしまう(60歳を迎えている人の場合)。
  2. iDeCoを「年金形式」で受け取り、公的年金等控除(年間60万円枠)を使う(これが現実的な解になりそうです)。

7. 年代別・今すぐやるべきTo Doリスト

あなたの年齢に合わせて、今週末にやるべきことをまとめました。

【45歳〜】 現状把握

  • ねんきん定期便チェック: 将来の公的年金の見込み額を知る。
  • 退職金規程の確認: 会社に「一時金のみ」か「年金払いも可能か」を確認。

【50歳〜】 種まきと準備

  • iDeCoのスイッチング: 出口が近づいたら、元本割れを避けるために、リスク商品を徐々に「定期預金型」などの安全資産へ移す検討を。
  • つなぎ資金の確保: iDeCoと退職金の受取時期をずらす間の生活費を、NISAなどで確保する。

【55歳〜】 決断と実行

  • 早期退職する場合: 会社を辞めたら速やかに企業型DCをiDeCoへ「移換」する。(6ヶ月以内!)
  • 受取方法の決定: 自分の退職金・DCの額でシミュレーションを行い、「一時金」か「年金(分割)」か、最も手取りが多くなる組み合わせを決める。

まとめ:知識は「手取り」に直結する

複雑な話をしてきましたが、要点は以下の3つです。

  1. 王道は「iDeCo先・退職金後」。ただし今後は「10年空ける」覚悟か、「年金受取」への切り替えが必要。
  2. 55歳退職などで退職金を先にもらうなら、DC(iDeCo)は「年金形式」で少しずつもらい、税金を消す。
  3. 民間の個人年金は、絶対に子供名義で受け取らない。

退職金の規定や、iDeCoの資産額は人それぞれ異なります。 「自分はどうするのが一番お得か?」は、会社の人事部も保険会社も教えてくれません。

この記事を参考に、ぜひ一度ご自身で「受け取りカレンダー」を作ってみてください。そのひと手間で、老後の旅行数回分のお金が浮くかもしれませんよ。


免責事項: 本記事は執筆時点(2025年)の法令・情報に基づき作成されています。税制は頻繁に改正されるため、実際のお手続きや税務申告に際しては、必ず最新の情報を国税庁ホームページ等でご確認いただくか、税理士等の専門家にご相談ください。記事の内容に基づいて被った損害について、筆者は一切の責任を負いかねます。

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