「うちの子のバイト代、扶養から外れちゃうかも…」そんな心配が軽くなります!
この前、高校時代からの友人と久しぶりにランチをしたんです。彼女のところは大学2年生の娘さんがいて、カフェのアルバイトに夢中になっているのだとか。「接客が楽しいみたいで、頼りにされてシフトもたくさん入ってるんだけどね…」と、どこか浮かない顔。
理由を聞いてみると、「このままだと、年収が130万円を超えちゃいそうで。扶養から外れたら、保険料とか大変なことになるでしょ?だから『少しシフトを減らしたら?』って言ってるんだけど、本人は『お店に迷惑かけられないし、稼げる時に稼ぎたい』って聞かなくて…」と深いため息。
ああ、その悩み、すごくよく分かります。子供が一生懸命なのは嬉しいけれど、家計のことを考えると素直に「頑張れ!」と言えない、あのジレンマ。いわゆる**「130万円の壁」**ですよね。この壁を意識して、年末になると慌ててシフト調整をする学生さんの話は、本当によく聞きます。
でも、もしあなたが私の友人と同じような悩みを抱えているなら、ぜひこの先を読み進めてください。実は、そんな親子にとって大きな追い風となる、制度の変更が間近に迫っているんです。
2025年10月から、この悩みの種だった「壁」のルールが、大きく変わることになりました。今回は、この重要な制度改正について、「結局、何がどう変わるの?」「うちの子の場合はどうなるの?」という疑問に、どこよりも分かりやすくお答えしていきたいと思います。
【見出し1】一体何が変わるの?2025年10月からの「健康保険」新ルールを速攻解説
結論からお伝えします。今回の変更点は非常にシンプルです。
2025年10月1日から、19歳以上23歳未満の子供などを健康保険の扶養に入れる場合の年収要件が、現在の「130万円未満」から「150万円未満」に引き上げられます。
これまで月10万8千円ちょっとで調整していた収入上限が、月12万5千円未満までOKになるイメージですね。これは大きいですよね。
もう少し詳しく、ポイントを整理してみましょう。
- いつから?
- 2025年(令和7年)10月1日からです。
- 誰が対象?
- 健康保険の被保険者(例えば、会社員の親)に扶養されている**「19歳以上23歳未満」の親族**が対象です。大学生や専門学生のお子さんの多くが、この範囲に収まるのではないでしょうか。(※配偶者は対象外です)
- 何が変わる?
- 親の健康保険の被扶養者でいられる年収の上限が、130万円未満から150万円未満へと、20万円も引き上げられます。
- なぜ変わるの?
- 背景には、日本全体の人手不足があります。学生さんのような若い世代が「扶養から外れたくないから」という理由で働く時間を調整(就業調整)してしまうと、社会全体の労働力が減ってしまいます。そこで、もっと気兼ねなく働けるように、そして学業と両立しながら社会経験を積めるように、という政府の狙いがあるんですね。
つまり、今回の改正は「もっと働きたい!」という意欲のある学生さんを応援するための、前向きなルール変更と言えるでしょう。
【見出し2】そもそも「年収の壁」っていくつあるの?これを機にスッキリ整理!
「150万円になっても、確か103万円の壁っていうのもあったような…?」 そうなんです。この「年収の壁」がややこしいのは、複数の種類があって、それぞれ意味が全く違うからなんですね。この機会に、頭の中をスッキリ整理してしまいましょう。
学生アルバイトに関わる主な「壁」は、大きく分けて**「税金の壁」と「社会保険の壁」**の2種類があります。
① 103万円の壁(税金の壁)
これは、「所得税」に関する壁です。 お子さんのアルバイト年収が103万円を超えると、まずお子さん自身に所得税がかかり始めます(勤労学生控除を使えば130万円まで非課税になる場合もありますが、ここでは基本の形で説明します)。 そして、親にとってより重要なのが、「扶養控除」が使えなくなることです。扶養控除とは、扶養している家族がいる場合に、親の税金が安くなる制度のこと。これが適用されなくなると、親が支払う所得税や住民税が年間で数万円~十数万円単位で増えてしまいます。家計へのインパクトは結構大きいですよね。
《ポイント》103万円の壁は、主に「親の税金負担」に関わる話。
② 130万円の壁(社会保険の壁)
こちらが、**「社会保険」**に関する壁です。 お子さんの年収が130万円以上になると、原則として親の健康保険の扶養から外れ、お子さん自身で国民健康保険や国民年金に加入し、保険料を支払う義務が生じます。この保険料負担が年間で数十万円になることもあり、手取りが一気に減ってしまう「働き損」の状態が起こりやすいため、多くの人が最も意識する壁と言われています。
そして、今回の2025年10月の改正で、19歳から22歳の方のこの壁が「150万円」に変わる、というわけです。
《ポイント》130万円(→150万円)の壁は、主に「子供自身の社会保険料負担」に関わる話。
(補足)忘れてはいけない「106万円の壁」
もう一つ、少し特殊な**「106万円の壁」**というものも存在します。これは、アルバイト先の会社が比較的大きな企業(従業員数101人以上など、条件あり)の場合に適用される壁です。年収130万円未満でも、特定の条件を満たすと、その会社の健康保険・厚生年金に加入する必要が出てきます。今回の改正とは直接関係ありませんが、お子さんのアルバイト先によっては、こちらの壁が適用される可能性もあるので、頭の片隅に置いておくと良いでしょう。
このように、「税金」と「社会保険」は全く別の制度で、それぞれに収入の基準(壁)がある、と理解することが混乱しないための最大のコツです。
【見出し3】「年収150万円未満」なら絶対お得?知っておきたい注意点と具体例
「じゃあ、これからは150万円ギリギリまで働いてもらっても安心ね!」 そう思いたくなりますが、ここでいくつか知っておくべき重要な注意点があります。メリットを最大限に活かすためにも、ぜひ押さえておきましょう。
注意点1:交通費や賞与も「収入」に含まれる!
これは非常によくある勘違いなのですが、社会保険の扶養を判定する際の「収入」には、月々の給料だけでなく、交通費(通勤手当)や残業代、賞与(ボーナス)なども含まれます。 給与明細の「総支給額」の欄を見て判断するのが一番確実です。「手取り」の金額ではないので注意してください。うっかり交通費を計算に入れ忘れていて、年末に「実は上限を超えていました…」なんてことになったら大変です。
注意点2:「103万円の壁」はそのまま!
今回の改正は、あくまで「社会保険」の話です。先ほど説明した**「103万円の壁(税金の壁)」は、これまでと何も変わりません。**
つまり、2025年10月以降、お子さん(20歳とします)の年収が例えば140万円だった場合、
- 社会保険の扶養: OK!
- 年収150万円未満なので、親の健康保険の扶養に入ったまま。お子さん自身が国民健康保険料などを払う必要はありません。
- 税法上の扶養: NG!
- 年収103万円を超えているので、親は「扶養控除」を使えなくなります。結果として、親の所得税・住民税が上がります。
「結局、損なの?得なの?」と疑問に思いますよね。 これは各ご家庭の所得によりますが、一般的に、親の税金負担が増える分を考慮しても、お子さんの手取りが30万円以上増えるのであれば、世帯全体で見ると手取りはプラスになるケースが多いです。ただ、この点は一度、ご家庭の状況に合わせてシミュレーションしてみることをお勧めします。
注意点3:対象年齢にしっかり注意!
この「150万円」という新しい基準は、**「19歳以上23歳未満」**という年齢に限定された特例です。 例えば、18歳の高校生のお子さんや、23歳以上のお子さん(大学院生など)の場合は、これまで通り「130万円の壁」が適用されますので、混同しないようにしましょう。
【見出し4】我が家はどう動く?家族で話したい3つのこと
今回の制度改正は、単なるルールの変更ではありません。これを良い機会と捉えて、お子さんとお金や働き方について話し合ってみてはいかがでしょうか。
① 子供の働き方の希望を聞く
まず一番大切なのは、お子さん本人がどうしたいか、です。「もっとシフトに入って経験を積みたい」「留学費用を貯めたいから稼ぎたい」「学業が忙しいから、ほどほどにしたい」など、様々な希望があるはずです。親の都合だけで「もっと働けるわね!」と決めるのではなく、本人の意思を尊重してあげたいですね。
② 家計全体のシミュレーションをしてみる
もしお子さんが「103万円を超えてもいいから、もっと稼ぎたい」と言うのであれば、先ほどの税金の話をしっかり伝えた上で、家計全体のシミュレーションをしてみましょう。「年収がこのくらいになると、パパ(ママ)の税金がこれくらい上がるけど、あなたの手取りはこれだけ増える。世帯全体ではプラスになるから、挑戦してみる?」といった具体的な会話ができると、お子さんも納得しやすいはずです。
③ 将来のキャリアを見据えた経験を
お金のことばかりに目を向けるのではなく、この機会を「将来のための自己投資」と捉える視点も大切です。収入の壁を気にしなくてよくなる分、責任のある仕事を任せてもらえたり、新しいスキルを学ぶチャンスが増えたりするかもしれません。アルバイトで得られる経験は、お金以上に価値のある財産になることもありますから。
【まとめ】変化をチャンスに!賢く制度を活用して、親子で未来を考えよう
今回の「150万円への壁の引き上げ」は、間違いなく多くの学生とその家族にとって朗報です。これまで収入を気にして我慢していた学生にとっては、もっと自由に、意欲的に働ける環境が整ったと言えるでしょう。
もちろん、税金の壁との兼ね合いなど、少し複雑な部分もあります。しかし、一番大切なのは、制度を「知っている」か「知らない」か、です。正しい知識があれば、無用な心配をしたり、損をしたりすることを避けられます。
変化は、時として私たちを不安にさせます。でも、その内容を正しく理解すれば、それは素晴らしい「チャンス」に変わります。
この記事が、あなたの家庭でのお金や働き方、そしてお子さんの未来について話し合う、良いきっかけとなれば、これほど嬉しいことはありません。
【免責事項】
本記事は2025年9月時点の情報を基に作成しています。法改正等の最新情報や、ご自身の具体的な状況に関するご相談は、必ずお近くの年金事務所、税務署、または社会保険労務士や税理士などの専門家にご確認いただきますようお願い申し上げます。