
こんにちは、makoです。
スーパーで「半額シール」が貼られた高級ステーキ肉を見つけたら、あなたはどうしますか? 「ラッキー!今のうちに買わなきゃ!」と飛びつく人が多いでしょう。
しかし、もしその肉の賞味期限が切れていて、しかも「食中毒の疑いで調査中」というニュースが流れていたらどうでしょうか? タダでも要りませんよね。
株式投資もこれと同じです。 株価が半分になったからといって、それが「お買い得(バリュー株)」とは限りません。中身が腐っていれば、それは**「安物買いの銭失い(バリュートラップ)」**になります。
今回分析するニデックは、数々の悪材料によって株価が低迷しています。 多くの個人投資家が「さすがに売られすぎだろう」「そろそろ反発するはず」と買い向かっていますが、私は**「今のニデックには、株価を算定する『物差し』が存在しない」**と考えています。
なぜなら、投資家が最も頼りにする指標「PER(株価収益率)」が、今のニデックでは**「測定不能(エラー)」**を起こしているからです。
今回は、ニデックの成長力を測る「PSR」や、資産価値を測る「PBR」を駆使して、現在の株価水準が本当に「安い」のかを徹底検証します。 感情ではなく、ロジックで「買い時」を見極める目を養いましょう。
第1章:「成長神話」の崩壊 ~エンジンは止まっている~
割安かどうかを判断する前に、まず「この会社は成長しているのか?」を確認する必要があります。 成長しない会社の株は、いくら安くても万年割安のまま放置されるからです。
ニデックの2026年3月期 第2四半期の決算短信から、成長の軌跡を確認しましょう。
【ニデック 成長性データ(前年同期比)】
- 売上高: +0.7%(ほぼ横ばい)
- 営業利益: △82.5%(大暴落)
- 四半期純利益: △58.6%(半減)
1. 「グロース株」の看板を下ろすべき数字
ニデックといえば、M&Aで売上も利益もガンガン伸ばす「超・成長企業(グロース株)」の代名詞でした。 しかし、今回の数字を見てください。 売上高は+0.7%。インフレや為替(円安効果)を考慮すれば、実質的にはマイナス成長と言っても過言ではありません。 利益に至っては、構造改革費用とはいえ8割減です。
投資家は、成長企業には「高い株価(プレミアム)」を許容します。 しかし、成長が止まった企業には、シビアな「適正価格」を要求します。 今のニデックは、「成長エンジンの故障」により、市場からプレミアムを剥奪された状態です。
第2章:PER(株価収益率)が「測定不能」の恐怖
株価が割安かどうかを見る最も有名な指標は**「PER(株価収益率)」**です。 「今の株価は、1株あたりの利益(EPS)の何倍か?」を表します。
- 計算式: 株価 ÷ 1株当たり純利益(EPS)
- 目安: 15倍以下なら割安。
では、ニデックのPERを計算してみましょう…と言いたいところですが、ここで重大な問題が発生します。
1. 「E(利益)」が消えた
決算短信の1ページ目下部、「2026年3月期の連結業績予想」の欄を見てください。 通常ならここに「通期でこれくらい稼ぎます」という数字が入るのですが、今回はこう書かれています。
「未定」
親会社の所有者に帰属する当期利益も、1株当たり当期利益も、すべて空欄です。 会社側が「調査中だから、最終的にいくら儲かるか(あるいは損するか)分からない」と匙を投げているのです。
2. PERが計算できない意味
PERの分母である「利益予想」がないため、現在のPERは計算できません。 強いて言えば、中間実績(27.21円)を2倍して無理やり年換算(54.42円)することもできますが、後半にさらなる損失が出る可能性が高く、全く当てになりません。
投資家にとって、**「PERが計算できない(=物差しがない)」**というのは、暗闇の中で目隠しをして歩くのと同じです。 基準がない以上、「今の株価は安い」と断定する根拠はどこにも存在しないのです。
第3章:PBR(株価純資産倍率)なら使えるのか?
「利益がダメなら、資産を見ればいいじゃないか」 そう考えるのがバリュー投資家です。ここで登場するのが**「PBR(株価純資産倍率)」**です。
- 計算式: 株価 ÷ 1株当たり純資産(BPS)
- 意味: 解散した時に戻ってくるお金に対して、株価は何倍か?
- 目安: 1倍を割れると「解散価値以下」で超割安。
ニデックのBPSを計算してみましょう。
- 純資産(親会社帰属持分): 1兆7,594億円
- 発行済株式数(自己株除く): 約11.46億株
- 1株当たり純資産(BPS): 約1,535円(※分割後基準)
もし、ニデックの株価がこの「1,535円」に近づいているなら、PBRは1倍付近となり、「底値」に見えるかもしれません。 しかし、ここにも**「バリュートラップ(割安の罠)」**が仕掛けられています。
罠:その「純資産」は本物か?
第2回、第5回で繰り返し分析した通り、ニデックの純資産には**「6,000億円の在庫」と「4,000億円ののれん」**が含まれています。
現在、第三者委員会が「在庫の価値」を調査中です。 もし調査結果で「在庫評価損」や「のれんの減損」が発生し、数千億円規模の資産が消滅したらどうなるでしょうか?
- シミュレーション: もし純資産が20%減ったら?
- BPSは 1,535円 → 1,228円 に下がります。
今のBPS(1,535円)を信じて「PBR1倍だから安い!」と飛びつくと、後で分母(純資産)が削られて、**「買った瞬間は割安に見えたけど、実は割高だった」という事態になりかねません。 これを「隠れPBR高」**と呼びます。今のニデックは、このリスクが極めて高いのです。
第4章:PSR(株価売上高倍率)で見ると…?
利益も資産も信用できない時、プロが最後にすがるのが**「売上高」です。 売上は利益ほど操作しにくいため、企業の規模感を測るのに適しています。 これを見るのが「PSR(株価売上高倍率)」**です。
- 計算式: 時価総額 ÷ 売上高
- ニデックの現状:
- 売上高(通期予想不能なため、前期実績等を参考):約2.5兆円規模
- 時価総額:株価次第だが、数兆円規模。
一般的に製造業のPSRは1倍前後が目安ですが、ニデックのような高収益(だった)企業は2倍〜3倍で評価されてきました。 しかし、利益率(稼ぐ力)が暴落している今、過去と同じPSR倍率を適用することはできません。
市場は今、ニデックを「高収益ハイテク企業」ではなく、**「利益率の低い普通のモーター屋」**として再評価(デレーティング)しようとしています。 その評価が定まるまでは、株価の「底」は見えません。
第5章:まとめと次回予告
いかがでしたか? 「株価が下がったから買い」という判断が、今のニデックにおいては「地雷原を歩く行為」であることが、指標分析から明らかになりました。
今回のニデックの成長性・割安性分析のポイントは、以下の3点です。
- 成長の停止:売上は横ばい、利益は激減。「グロース株」としてのプレミアムは剥落している。
- PERは「測定不能」:通期業績予想が「未定」のため、PERを使った割安判定が不可能。基準がない状態で買うのはギャンブルである。
- PBRの「落とし穴」:PBR1倍に近づいても安心できない。分母である「純資産」自体が、今後の調査で減額されるリスク(隠れ割高リスク)を抱えている。
結論として、今のニデック株は「バーゲンセール」ではなく、**「中身の腐敗度合いを確認中の見切り品」**です。 調査結果が出て、腐った部分(損失)をすべて切り落とし、正しい値札(業績予想)が付くまでは、手を出してはいけません。
【今日のアクションプラン(ベビーステップ)】
この記事を読み終えたら、ご自身の証券アプリで、ニデックの「業績予想」欄を見てください。 もしそこに「—(ハイフン)」や「未定」と書かれていたら、**「この株には現在、適正株価が存在しない」**と脳内変換してください。 そして、「予想PER」の数字が表示されている他の健全な銘柄と比較してみてください。その「数字がある」という安心感こそが、投資の第一歩です。
【次回予告】
「数字の話はもうお腹いっぱいです…」 「結局、ニデックのビジネス自体はどうなの? 将来性はあるの?」
お待たせしました。数字の分析は一旦ここで終了です。 次回からは、数字の裏側にある「定性分析(ビジネスの中身)」に入ります。
次回、第8回は**【定性分析①:ビジネスモデルと競合比較】編です。 「回るもの、動くもの」全てを支配しようとするニデックの野望。 AIデータセンター向けの水冷モジュールなど、「世界を救うかもしれない次世代技術」と、中国メーカーとの血で血を洗う「価格競争の泥沼」**。 ニデックのビジネスは、本当にこれからも「世界No.1」でいられるのか?
次回を読むと、数字だけでは見えない企業の「寿命」が見えてきます。お楽しみに。
【makoの投資判断スコア】 評価:1 / 10点 (理由:バリュエーション(割安性)を測るためのPERが計算不能、PBRも資産毀損リスクで信頼性低、という「測定不能」の状態です。投資とは「価格」と「価値」の差を取るゲームですが、今のニデックは「価値」が霧の中にあります。霧が晴れる(調査完了・業績予想開示)まで待つのが、賢明な投資家の態度です。現状は「落ちるナイフ」である可能性が極めて高いです。)
免責事項 本記事は、提供された2026年3月期第2四半期決算短信に基づき、情報の提供を目的としてAIが作成したものです。特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。記載内容は作成時点のものであり、将来の成果を保証するものではありません。特に株価指標(PER、PBR等)の評価は、作成時点の開示情報に基づく仮定のシミュレーションを含みます。投資判断は、必ずご自身の責任において行ってください。

