その「ほったらかし」、本当に大丈夫ですか?
こんにちは。
「新NISAは、一度設定したらあとは放置でOK!」 「ほったらかしで資産が増えるなんて最高!」
あなたも、そんな言葉を聞いて新NISAを始めた一人かもしれません。私自身、40代になって本格的に資産形成を考え始めたとき、この「ほったらかし」という言葉の持つ魔法のような響きに、大きな魅力を感じたものです。
毎日忙しい私たちにとって、手間がかからないのは何よりのメリット。最初に銘柄を選んで積立設定を済ませてしまえば、あとは自動的にお金が働いてくれる…まさに理想の仕組みですよね。
でも、心のどこかでこんな風に思っていませんか?
「本当に、このままずっと何もしなくていいのかな…?」 「みんな『ほったらかし』って言うけど、何か落とし穴があるんじゃないか…?」
その感覚、すごくよく分かります。そして、その感覚は決して間違っていません。
実は、NISAの恩恵を最大限に引き出し、10年後、20年後に「あの時やっておいて本当に良かった」と心から思えるようにするためには、年に一度だけ、ほんの少しだけあなたの資産に愛情を注いであげる時間が必要なのです。
この記事では、その年に一度だけ行うべき**「たった一つのお手入れ」=「リバランス」**について、おそらく世界一やさしく、分かりやすく解説していきます。
「リバランス」なんて、横文字が出てきて難しそう? 大丈夫です。この記事を読み終える頃には、「なんだ、そんな簡単なことだったのか!」「これなら私にもできる!」と、スッキリとした気持ちになっていることをお約束します。
これは、40代の私たちが、将来のお金の不安から解放され、安心して自分の資産を育てていくための、大切な知恵と技術のお話です。
そもそも「リバランス」とは?庭の雑草取りに例えて解説!
さて、「リバランス」です。 この言葉を聞いて、何か複雑な金融計算や、専門家が使う難しいテクニックを想像したかもしれません。でも、そのイメージは今日、ここで捨ててしまってください。
リバランスとは、一言でいえば**「お庭のお手入れ」**のようなものです。
想像してみてください。 あなたが理想の庭をデザインしたとします。 「日当たりの良い南側には、ぐんぐん育つお花の木を植えよう。北側の涼しい場所には、日陰でも静かに育つ緑の葉を植えよう」 そして、それぞれの植物が育つスペースの割合を「お花の木エリア:50%」「緑の葉エリア:50%」と決めたとします。これが、NISAでいうところの**「資産配分(アセットアロケーション)」**を決める、最初のステップです。
さて、1年後。あなたのお庭はどうなっているでしょうか。 日当たりの良い場所で太陽の光をたっぷり浴びたお花の木は、あなたの想像以上にぐんぐん成長し、枝葉を広げて、庭全体の70%を占めるまでになりました。一方で、北側の緑の葉は、ゆっくりと着実に成長し、庭の30%のスペースを占めています。
お庭全体としては、緑が増えて豊かになりました。これは素晴らしいことです。 でも、最初の理想のデザイン「お花の木50%、緑の葉50%」というバランスは崩れてしまっていますよね。このまま放っておくと、お花の木ばかりが茂ってしまい、緑の葉が育つスペースがなくなってしまうかもしれません。
そこで、あなたがお庭のお手入れをします。 育ちすぎたお花の木の枝を少し剪定(せんてい)して、その分、緑の葉のエリアが広がるように整えてあげる。こうして、お庭全体のバランスを、再び理想の「50%:50%」の状態に戻してあげる。
この、お庭のバランスを整える作業こそが、「リバランス」なのです。
NISAの世界に話を戻しましょう。
- お花の木(ぐんぐん育つ) → 株式(ハイリスク・ハイリターン)
- 緑の葉(ゆっくり育つ) → 債券(ローリスク・ローリターン)
あなたが最初に「株式50%、債券50%」という資産配分でNISAを始めたとします。1年後、株式市場が好調で、あなたの保有する株式の価値が大きく上がりました。すると、あなたの資産全体に占める株式の割合は、50%から60%、70%へと増えていきます。
これは喜ばしいことですが、同時に、あなたが当初想定していた以上に**「リスクを取りすぎている状態」**になっている、とも言えるのです。もしこの状態で株価の暴落が起きたら、資産全体に与えるダメージは、最初に想定していたものより大きくなってしまいます。
そこで、年に一度、この崩れたバランスを元の「株式50%、債券50%」に戻してあげる。 これが、NISAにおけるリバランスです。
リバランスには、大きく分けて2つの大切な目的があります。
- 目的①:リスクの管理 お庭がお花の木だらけになるのを防ぐのと同じで、自分の資産が特定のカテゴリー(例えば株式)に偏りすぎるのを防ぎます。これにより、想定外の大きな損失を被るリスクを、自分でコントロールできるようになります。
- 目的②:利益の最大化 ここが面白いポイントです。育ちすぎたお花の木(価値が上がった株式)の枝を剪定する、つまり**「利益が出ている資産を一部売却する」ことになります。そして、手薄になった緑の葉のエリア(価値が相対的に下がっている債券)を広げる、つまり「割安になっている資産を買い増す」ことになります。 これは、投資の格言である「高く売って、安く買う」を、感情に左右されず、機械的・自動的に実践できる**非常に賢い方法なのです。
どうでしょうか。「リバランス」という言葉へのアレルギーが、少し和らいできたのではないでしょうか。
【超・実践編】NISAのリバランス、具体的な3ステップ
「リバランスの理屈は分かった。でも、具体的にどうすればいいの?」 ご安心ください。ここからは、具体的なアクションプランを3つのステップで解説します。
と、その前に。 あなたに、とても大切で、そして朗報となる事実をお伝えしなければなりません。
それは、**「新NISAを始めたほとんどの人は、自分でリバランスをする必要がない」**ということです。
「え、どういうこと?」と驚きましたか?
もし、あなたがNISAで積み立てている商品が、 「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」 「楽天・S&P500インデックス・ファンド」 といった、いわゆる**「全世界株式」や「米国株式(S&P500)」に連動するタイプの投資信託1本だけ**なのであれば、あなたは何もする必要はありません。
なぜなら、これらの投資信託は、その商品の中で、運用のプロたちが常に最適な状態になるように、自動で中身のバランスを調整(リバランス)し続けてくれているからです。いわば、超優秀な庭師さんが、24時間365日、あなたのお庭を最高の状態に保ってくれているようなものです。
ですから、これらの投資信託を1本だけ積み立てているあなたは、安心して、そのまま「ほったらかし」を続けてください。
では、どんな人がリバランスを検討する必要があるのでしょうか? それは、**「自分で複数の商品を意図的に組み合わせて、オリジナルの庭を作っている人」**です。
例えば、
- 「成長を狙う全世界株式ファンドを70%、安定を狙う債券ファンドを30%」
- 「メインはS&P500を80%、スパイスとして日本の高配当株ファンドを20%」
- 「先進国株式を50%、新興国株式を30%、国内株式を20%」
このように、ご自身でこだわりの資産配分(ポートフォリオ)を作っている方は、年に一度のお手入れ、リバランスを行うことで、その効果を最大限に発揮できます。
お待たせしました。具体的な3つのステップです。
ステップ①:現状の確認(年に1回、タイミングを決める)
まず、年に一度、自分の資産の健康診断をする日を決めましょう。 「毎年、自分の誕生月に」「年末の大掃除のついでに」「お子さんの新学期が始まる4月に」など、あなたが忘れないタイミングで構いません。手帳やスマホのカレンダーに「NISAのチェック日」と登録してしまうのがおすすめです。
その日が来たら、あなたが利用している証券会社(楽天証券、SBI証券など)のサイトやアプリにログインしてみてください。 マイページの中にある「ポートフォリオ」や「資産構成」、「保有商品一覧」といったボタンを押すと、現在あなたが保有している資産が、どの商品を何パーセントずつ持っているか、円グラフなどで分かりやすく表示されているはずです。
そこで、ご自身が最初に決めた理想の比率(例:全世界株式70%、債券30%)と、現在の比率(例:全世界株式78%、債券22%)が、どれくらいズレているかを確認します。 これが最初のステップです。簡単ですよね?
ステップ②:元の配分に戻す
さて、ズレが確認できたら、それを元の理想の配分に戻していきます。 方法は主に2つあります。
- 方法A:増えすぎた方を「売って」、減っている方を「買い増す」 最もシンプルな方法です。先ほどの例で言えば、増えすぎた「全世界株式」を8%分売却し、そのお金で減っている「債券」を買い増す、というやり方です。 ただし、この方法はNISAの非課税投資枠を一度売却で使ってしまうことになるため、長期的な視点では少しもったいない側面もあります。
- 方法B:これからの「積立設定を変更」して調整する(推奨!) 私が40代のあなたに強くおすすめしたいのが、こちらの方法です。 これは、今保有している資産は一切売らずに、これから積み立てるお金の配分を変えることで、時間をかけてゆっくりと理想のバランスに戻していく、という賢いやり方です。**「ノーセル・リバランス」**とも呼ばれます。例えば、毎月5万円を「全世界株式:35,000円」「債券:15,000円」で積み立てていたとします。 現在の比率が「全世界株式78%、債券22%」に偏っているのを確認したら、次の半年間だけ、積立設定を**「全世界株式:10,000円」「債券:40,000円」**のように、債券の割合をぐっと増やす設定に変更するのです。 こうすることで、資産を売却することなく、徐々に理想の比率である「70%:30%」に近づけていくことができます。そして、理想の比率に戻ったら、また元の積立設定に戻せば良いのです。
ステップ③:年に1回、繰り返す
理想の比率に戻すための設定変更が終わったら、あとは、また来年の「NISAのチェック日」まで、普段通り過ごすだけです。 たったこれだけ。 この年に一度の簡単なお手入れを繰り返すだけで、あなたの資産はより堅実に、そして健やかに育っていくことでしょう。
40代の私たちがリバランスとどう向き合うか
さて、リバランスの具体的な方法が分かったところで、最後に、私たち40代がこのリバランスという作業と、どう向き合っていくべきかについて、少しだけお話しさせてください。
まず、完璧主義になる必要は全くありません。 「理想の比率が70:30なのに、72:28になっている!今すぐ直さなきゃ!」と、1%や2%のズレに神経質になる必要はないのです。一般的には、理想の比率から±5%程度のズレであれば、許容範囲と考えて良いでしょう。 大切なのは、完璧な比率を維持することよりも、年に一度、自分の大切な資産に関心を持ち、その状態を把握する「きっかけ」にすることです。
そしてもう一つ、これが40代にとって非常に重要なのですが、リバランスは**「今の自分と家族にとって、最適な資産バランスか?」を再確認する絶好の機会**だということです。
私たちの40代という年代は、ライフステージが大きく変化する時期です。 20代、30代の頃に決めた資産配分が、今の自分たちにとってベストとは限りません。
例えば、 「子供の大学入学が5年後に迫ってきた。そろそろリスクの高い株式の比率を少し下げて、安定的な債券の割合を増やしておこうかな」 「住宅ローンの繰り上げ返済が見えてきたから、もう少し積極的に、株式の比率を上げてみようかな」 「夫婦二人だけの生活に戻ったから、リスク許容度も上がった。新興国株式にも少し挑戦してみようか」
このように、リバランスのタイミングで、ただ単に元の比率に戻すだけでなく、その「元の比率」自体が、今の自分たちの人生設計に合っているかを見直すのです。
NISAにおける「ほったらかし」の本当の意味。 それは、日々の株価の動きに一喜一憂して、感情的に売買しない、ということです。決して「自分の資産に無関心で良い」という意味ではありません。
相場が良い時は誰でも心穏やかでいられますが、問題は市場が嵐に見舞われた時、つまり「暴落時」です。ニュースで連日『株価が大幅下落!』といった言葉が踊ると、途端に不安になり、「大切なお金が減っていく…今すぐ売った方がいいのでは?」という強い衝動に駆られるかもしれません。
しかし、どうか思い出してください。世界の経済は、これまで幾度となく短期的な暴落や危機を乗り越え、長期的には右肩上がりに成長を続けてきました。私たち長期投資家にとって最大の敵は、市場の暴落そのものではなく、暴落への恐怖から将来の大きな利益の種まで刈り取ってしまう**「狼狽(ろうばい)売り」**なのです。
年に一度のリバランスは、こうした市場の嵐の中でも「自分は感情ではなく、決まったルールに則って運用している」という自信を与えてくれる、心の”お守り”のような役割も果たしてくれます。
不安な時こそ、どっしりと構えて市場に居続けること。 それこそが、10年後、20年後に豊かな果実を得るための、最も重要で、そして最も難しいことなのかもしれません。
まとめ
今回は、NISA運用における年に一度の「たった一つのお手入れ」であるリバランスについてお話ししました。
- リバランスとは、崩れた資産のバランスを元に戻す「お庭のお手入れ」のようなもの。
- 目的は「リスクの管理」と、結果的な「利益の最大化」。
- 「全世界株式」など1本の投信だけ積立している人は、何もしなくてOK!
- 複数の商品を組み合わせている人は、年に一度、積立設定の変更で調整するのがおすすめ。
- 40代にとってリバランスは、今の自分に最適な資産配分かを見直す大切な機会。
- 暴落時こそ「狼狽売り」せず、長期で保有し続けることが資産形成の鍵。
難しく感じていた横文字も、こうして紐解いてみれば、とてもシンプルで、合理的で、そして私たちの資産形成にとって大切な作業であることが、お分かりいただけたのではないでしょうか。
まずは第一歩として、今年のあなたの「NISAチェック日」を決めてみませんか? そして、その日が来たら、久しぶりにご自身の証券口座にログインして、あなたのお庭が今、どんな状態になっているか、優しく眺めてみてください。
それが、10年後、20年後のあなたの笑顔と安心につながる、大きな大きな一歩になるはずです。 一緒に、賢く、そして気楽に、大切な資産を育てていきましょう。
【免責事項】
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投資には、元本割れを含む様々なリスクが伴います。金融商品の選択や投資の最終的な判断は、必ずご自身の責任と判断において行っていただきますようお願い申し上げます。
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