第12回 才能に頼るな!努力こそが最強の武器である

皆さん、こんにちは!

あなたのクラスにもいませんか? 授業をそんなに真面目に聞いていないように見えるのに、テストではいつも高得点。少し説明を聞いただけで、すぐに「あ、わかった」と本質を掴んでしまう。いわゆる「天才肌」と言われる人たちです。彼らを見ていると、「やっぱり、生まれつきの才能には敵わないのかな…」と、少しだけやる気をなくしてしまうこともあるかもしれません。

しかし、もしその「才能」が、長い目で見ると、知性の成長を妨げる甘いワナになる可能性があるとしたら、どうでしょう。

300年前に生きたアイザック・ワッツは、知性の世界における真の英雄は、生まれつきの天才ではなく、地道な努力を続けられる者だと見抜いていました。今回は、誰もが手に入れることができる「努力」という最強の武器の本当の力について、探っていきましょう。

「才能」という名の、甘くて危険なワナ

才能があることは、素晴らしいことです。他の人より速く物事を理解できたり、少ない労力で成果を出せたりするのは、大きなアドバンテージでしょう。しかし、ワッツはそのアドバンテージに寄りかかることの危険性を、厳しく指摘しています。

彼は**「努力と学習なしには知識と知恵は得られず、才能に頼りすぎると怠惰に陥り、無知なまま年老いることになる」**と警告しました。これは、まるで有名な「ウサギとカメ」の寓話のようです。自分の足の速さ(才能)に驕ったウサギが昼寝をしている間に、歩みは遅くとも着実に進み続けたカメ(努力)が、最終的にゴールにたどり着く。知性の世界でも、全く同じことが起こりうるのです。

なぜ、才能がワナになるのでしょうか。それは、才能のある人が「困難の壁にぶつかり、それを乗り越える」という、知性を鍛える上で最も重要なトレーニングを経験する機会が少ないからです。簡単な問題ばかりを解いていると、思考の筋肉はなまり、少し難しい問題が出てきただけで、「面倒くさい」「自分には向いていないかも」と、すぐに諦めてしまう脆い心が育ってしまいます。

才能に頼っている人は、努力しなくても得られる「楽な成功」に慣れてしまっています。そのため、本当の困難に直面した時、それを乗り越えるための精神的なスタミナや、試行錯誤するための粘り強さが、決定的に欠けている場合があるのです。

「努力」は才能を超える魔法 – 脳の「筋トレ」を始めよう

一方で、「努力」とは何でしょうか。それは、単なる苦しい我慢ではありません。それは、あなたの脳を、昨日よりも少しだけ強く、賢くするための「筋力トレーニング」です。

ワッツは**「学びの人生は安逸なものではない:学者になるには、熱心に学び、それが喜びとなる覚悟が必要である」**と述べています。これは、脅し文句ではありません。スポーツ選手が、厳しいトレーニングの中に自分の成長を見出して喜ぶように、知的なトレーニングである「努力」そのものの中に、喜びを見出すべきだ、という応援メッセージなのです。

皆さんが苦手な数学の問題を解いている時、あなたの脳の中では、新しい神経回路が生まれ、つながり、強化されています。それは、ダンベルを持ち上げて腕の筋肉を鍛えているのと全く同じです。最初は1キロのダンベルも重く感じますが、続ければ5キロ、10キロと持ち上げられるようになります。同様に、最初は解けなかった問題も、繰り返し挑戦する「努力」によって、脳がその問題に対応できるように「成長」し、いずれ解けるようになるのです。

才能が「初期ステータス」の高さだとすれば、努力は経験値を稼いで「レベルアップ」する行為です。どんなに初期ステータスが高いキャラクターも、地道に経験値を稼がなければ、すぐにレベルの高い敵には勝てなくなってしまいますよね。努力を続ける者は、自分の脳を、どんな難問にも立ち向かえるように、日々鍛え上げているのです。

「ひらめき」や「記憶力」だけでは賢くなれない

「でも、頭が良い人って、記憶力が良かったり、すぐに良いアイデアがひらめいたりするじゃないか」と思うかもしれません。確かに、それらも才能の一部でしょう。しかし、ワッツは、それだけでは真の知恵には到達できないと断言します。

彼は**「即座の機知は博識な人を作るものではない:多読と強い記憶力だけでは真の知恵とはならず、熟考と自身の理性の行使が重要である」**と述べています。 これは、非常に重要な指摘です。いくらたくさんの知識を記憶していても、その知識がバラバラのまま脳の倉庫に眠っているだけでは、クイズには勝てるかもしれませんが、新しいものを生み出したり、複雑な問題を解決したりすることはできません。

真の知恵とは、記憶した知識(点)を、自分の頭でじっくりと考える「努力(=熟考)」によって結びつけ、新しい意味を持つ「線」や「面」にしていく力のことです。アインシュタインの相対性理論も、ニュートンの万有引力の法則も、単なる天才的なひらめきだけで生まれたわけではありません。彼らがそれまでに学んだ膨大な知識を、粘り強く、諦めずに、自分の頭の中でこねくり回し続けた「努力」の末に、ようやくたどり着いた結晶なのです。

記憶力やひらめきは、料理で言えば高級な食材のようなもの。しかし、その食材をどう調理し、誰も食べたことのないような絶品料理に仕上げるかは、シェフの「熟考」という名の、地道な努力にかかっているのです。

まとめ:最強の武器を、今すぐ手に入れよう

今回は、つい憧れてしまう「才能」よりも、誰もが持つことができる「努力」こそが、知性を向上させるための最強の武器である、というお話をしました。

ポイントを振り返ってみましょう。 第一に、才能に頼ることは、困難を乗り越える思考の筋肉を衰えさせ、成長を止めてしまう危険なワナであること 。 第二に、**努力とは、脳の神経回路を鍛え、成長させるための「筋トレ」**であり、続ければ確実にあなたの思考力は強くなること 。 そして第三に、真の知恵とは、単なる記憶力やひらめきではなく、知識を自分の頭で考え抜く「熟考」という努力から生まれるものであること

あなたが今、「自分には才能がない」と感じていたとしても、全く落ち込む必要はありません。なぜなら、あなたは既に、才能を超える可能性を秘めた「努力」という最強の武器を、その手に持っているのですから。

【明日からできるアクションプラン】 あなたの最も苦手な科目、あるいは、どうしても解けなくて諦めてしまった問題を一つ、ノートに用意してください。そして、明日、たった15分だけでいいので、その問題と向き合ってみましょう。目標は「解くこと」ではありません。「考えるという努力をすること」です。分からなくて、頭がジーンとする感覚。それこそが、あなたの脳が鍛えられている証拠です。その感覚を、少しだけ楽しんでみてください。

その15分の小さな一歩が、あなたの最強の武器を磨き上げる、偉大なトレーニングの始まりとなるはずです。

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