第18回 感情に流されない!冷静な判断力を手に入れる

皆さん、こんにちは!

テスト本番、最初の問題が分からなくて頭が真っ白になり、焦ってしまって解けるはずの問題までミスしてしまった…。 友達とのLINEで、相手の言葉にカチンときて、ついイライラをぶつけるような返信をしてしまい、後で激しく後悔した…。

こんな風に、「イライラ」や「不安」、「焦り」といった感情に振り回されて、普段ならしないようなミスをしたり、間違った判断をしてしまったりした経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。

私たちは人間ですから、感情を持つのは当たり前のことです。しかし、その感情が暴走して、あなたの「理性」という名の船長を乗っ取ってしまったら…? 300年前に生きたアイザック・ワッツは、この「感情」こそが、知性を曇らせる最大の要因の一つだと、鋭く見抜いていました。

今回は、この厄介な「感情の嵐」に飲み込まれず、常に冷静な判断力を保つための「思考のOS」について探っていきましょう。

感情は、あなたの「判断力」を歪めるウイルス

ワッツは、知性を磨く上で、「気まぐれと感情にふける危険性」 について厳しく警告しています。彼は、「気まぐれな精神と感情に流される行動は、判断を歪め、愚行を招く」 と断言しました。

これは、現代の脳科学や心理学でも裏付けられている事実です。強い感情(特に怒り、恐怖、不安)が働いている時、私たちの脳は「闘争か逃走か」というサバイバルモードに入ります。このモードでは、物事を多角的に分析し、長期的な視点で考える「理性」の力(前頭前野の働き)が抑制されてしまうのです。

ワッツの言葉を借りれば、激しい**「情熱は理解を曇らせ」** ます。 例えば、あなたが誰かと真剣な議論をしているとしましょう。相手から自分の意見を強く否定された瞬間、カッとなって感情的になってしまったら、どうなるでしょうか。 ワッツは、「議論中に感情的にならないよう、全ての感情を抑えることが不可欠である」 と述べています。なぜなら、感情的になった瞬間、あなたの頭は「真理を探求する」こと(第7回・第9回参照)をやめ、「相手を言い負かす」ことだけを考えてしまうからです。その結果、相手も怒り出し 、議論は決裂。あなたは冷静な判断も、大切な友人も失うことになるかもしれません。

感情というウイルスは、あなたの「思考のOS」に侵入し、最も重要な「判断力」というプログラムをクラッシュさせてしまうのです。

あなたは「感情」の主人か、それとも「奴隷」か?

では、私たちは感情に振り回されるしかないのでしょうか? いいえ、そんなことはありません。ワッツは、感情を「抑える」こと、つまりコントロールすることが可能であり、それが賢明な判断への道だと説いています。

彼は、物事を深く考えるために必要な「集中力」の大きな敵として、「より感覚的な感情や欲望にふけるのを避けること」 を挙げています。また、「悪しき欲望にふけることは理解力を低下させ、判断を歪める」 とも述べています。 これは、「テスト前だけど、動画が見たい!」「面倒だから、宿題は後回しにしたい!」といった、目先の「欲望」や「感情」に従うことが、最終的に「テストで良い点を取る」という合理的な判断を、どれだけ難しくするかを的確に示しています。

大切なのは、感情の「奴隷」になることではありません。感情が湧き上がってくることを認識しつつも、それに流されず、最終的な判断の主導権を「理性」が握ること。つまり、あなたが感情の「主人」になることです。

「理性の盾」を鍛える3つのトレーニング

感情の嵐が来ても、すぐに吹き飛ばされない「理性の盾」を鍛えるために、明日からできる3つの簡単なトレーニングを紹介しましょう。

  1. 「感情」と「事実」を言葉で切り分ける カッとしたり、不安になったりした時、私たちは「もう最悪だ!」と、感情と事実をごちゃ混ぜにしがちです。まずは、この二つを切り離してみましょう。 「(あいつのせいで)ムカつく!」(感情) ではなく、 「(事実として)彼は私との約束の時間に30分遅刻した。そして(感情として)私は今、とても怒っている」 と、心の中で分けてみる。たったこれだけで、感情を客観視でき、理性が働く「隙間」が生まれます。
  2. 6秒間の「タイムアウト」を取る 怒りのピークは、長続きしないと言われています。イラッとしたら、すぐに言葉を返したり、行動したりしないでください。ワッツが言うように**「常に冷静を保つべき」** です。心の中で「1、2、3、4、5、6…」とゆっくり数え、深く息を吸う。このたった6秒間の「タイムアウト」が、感情の暴走を食い止め、理性の船長が再び舵を取るための、貴重な時間稼ぎになります。
  3. 「徳」を意識する ワッツは、最終的に**「徳高く敬虔な精神状態を維持することが真の知恵への道である」** と述べています。これは、小手先のテクニックではなく、「自分は誠実な人間でありたい」「公平な判断をしたい」という、日頃からの心の持ちよう(=徳)が、いざという時に感情をコントロールする力になる、ということです。自分がどうありたいかを意識することが、目先の欲望に打ち勝つ強さにつながるのです。

まとめ:冷静さこそが、あなたの判断を研ぎ澄ます

今回は、知性のOSをクラッシュさせる「感情」の危険性と、それに流されずに冷静な判断力を保つ方法についてお話ししました。

ポイントを振り返ってみましょう。 第一に、イライラや不安といった強い感情は、理性の働きを鈍らせ、判断を歪め、愚行を招く最大の敵の一つであること 。 第二に、真の知恵とは、感情に流される「奴隷」ではなく、それを**コントロールする「主人」となり、理性で判断することであること 。 そして第三に、「事実と感情の切り分け」「タイムアウト」「徳の意識」**といったトレーニングが、冷静さを保つ「理性の盾」を鍛えてくれること。

感情は、あなたの人生を豊かに彩るエネルギー源です。しかし、そのエネルギーが暴走すれば、すべてを焼き尽くす炎にもなります。その炎を理性でコントロールし、進むべき道を照らす「光」に変えること。それこそが、ワッツが教える「知性の向上」の、重要なステップなのです。

【明日からできるアクションプラン】 次にあなたが「カッとなった」「不安になった」「焦った」と気づいた瞬間、行動や発言を起こす前に、一度だけ立ち止まってみてください。そして、心の中で「ストップ!」と唱え、ゆっくりと深呼吸を一つだけしてみましょう。 たったそれだけで、感情の嵐のど真ん中から、少しだけ距離を取ることができます。その小さな「間(ま)」こそが、あなたの理性を呼び戻す、最初の第一歩です。

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