第7回【超詳細解説版】:企業の儲けの設計図!損益計算書(P/L)を徹底解剖

第7回【超詳細解説版】:企業の儲けの設計図!損益計算書(P/L)を徹底解剖

こんにちは!

これまでの記事で、私たちはフジクラの全体像と、各事業セグメントの好不調を分析してきました。特に、情報通信事業が会社全体の利益を力強く牽引していることが分かりましたね。

では、その「利益」とは、一体どのようなプロセスを経て生み出されるのでしょうか?

今回は、企業の**「儲けの設計図」とも言える「損益計算書(P/L:Profit and Loss Statement)」**を徹底的に解剖します。会社の売上が、様々なコストを経て、最終的な利益に変わっていく一連の流れを、フジクラの実際の数字を追いかけながら学びましょう。


損益計算書(P/L)とは何か?

損益計算書(P/L)とは、「会社が一定期間(今回は3ヶ月間)に、どれだけ売上を上げ、どれだけ費用を使い、結果としてどれだけ儲かったか」を示す、いわば会社の成績表です。

P/Lの最大の特徴は、利益を5つのステップに分けて計算していく点にあります。これにより、私たちは「儲けの源泉」や「利益を圧迫している要因」を段階的に理解することができます。

今回は、この5つの利益の「滝」を、フジクラの数字と共に上から下へと下っていく冒険に出かけましょう。


STEP 1:売上総利益 – 商品・サービスの「地力」を見る

P/Lの冒険は、全ての源泉である「売上高」から始まります。

  • 売上高:2,679億円 これは、フジクラが3ヶ月間で稼いだ全ての売上の合計です。

次に、この売上を上げるために直接かかったコストである「売上原価」を差し引きます。これは、製品の材料費や、工場で働く人々の人件費などが含まれます。

  • 売上原価:1,945億円

そして、最初の利益が姿を現します。

【計算式】売上高 2,679億円 – 売上原価 1,945億円 = 売上総利益 734億円

この売上総利益は、しばしば**「粗利(あらり)」**とも呼ばれ、その会社が提供する商品やサービスそのものが持つ、根本的な収益力を示します。

【深掘り分析】売上総利益率(粗利率)で収益性をチェック

この「地力」がどれほどのものか、売上総利益率を計算して評価してみましょう。

  • 今期の売上総利益率:27.4% (734億円 ÷ 2,679億円)
  • (参考)前期の売上総利益率:23.7% (517億円 ÷ 2,183億円)

前期と比べて利益率が3.7ポイントも改善しています。これは、より付加価値の高い(=儲かる)製品が売れたか、製造コストの削減に成功したことを意味し、非常にポジティブな兆候です。


STEP 2:営業利益 – 「本業で稼ぐ力」を見る

次に、売上総利益から、ビジネスを運営するために必要な間接的なコストである**「販売費及び一般管理費(販管費)」**を差し引きます。

  • 販管費:323億円 これには、本社の社員の給料、広告宣伝費、研究開発費などが含まれます。

【計算式】売上総利益 734億円 – 販管費 323億円 = 営業利益 411億円

この営業利益こそ、**「企業が本業でどれだけ稼いだか」**を示す、最も重要な利益指標の一つです。私たちが前回までのセグメント分析で見てきたのは、この営業利益でしたね。


STEP 3:経常利益 – 会社の「総合的な実力」を見る

本業が好調でも、会社には財務活動など、本業以外の収益や費用も発生します。それらを加味したのが経常利益です。

  • 営業外収益:33億円 (預金の受取利息、保有株式の配当金、為替差益など)
  • 営業外費用:26億円 (借入金の支払利息、為替差損など)

【計算式】営業利益 411億円 + 営業外収益 33億円 – 営業外費用 26億円 = 経常利益 418億円

【深掘り分析】営業利益と経常利益の関係

フジクラの場合、営業利益(411億円)と経常利益(418億円)の差はわずかです。これは、会社の利益の源泉が、財務活動などではなく、しっかりと本業にあることを示しており、非常に健全な状態と言えます。


STEP 4 & 5:純利益 – 会社の「最終的な手残り」

最後に、その期にだけ発生した特殊な要因である「特別利益」と「特別損失」を反映させ、そこから税金を支払って、最終的な利益を確定させます。

  • 特別利益:19億円 (保有していた関係会社の株式を売却した利益など)
  • 特別損失:0.3億円 (事業構造の改善費用など)
  • 法人税等:111億円

【計算式】

経常利益 418億円 + 特別利益 19億円 – 特別損失 0.3億円 = 税引前純利益 437億円 税引前純利益 437億円 – 法人税等 111億円 = 純利益 326億円

そして、この純利益から、連結子会社の非支配株主(少数株主)の持ち分を差し引いた、親会社の株主の最終的な取り分が**「親会社株主に帰属する四半期純利益」**です。

  • 親会社株主に帰属する四半期純利益:313億円

この数字が、決算短信1ページ目に記載されていた「最終利益」の正体です。


まとめ:P/Lは企業のストーリー

今回は、損益計算書(P/L)を上から下まで、フジクラの実際の数字を追いかけながら分析しました。 「売上高」というスタートラインから、様々なコストが差し引かれ、最終的な「純利益」にたどり着くまでの、まさに**企業の「儲けのストーリー」**が見えたのではないでしょうか。

フジクラのP/Lからは、本業の収益性が改善し、その利益をしっかりと最終利益まで繋げられている、非常に健全な経営状態が読み取れました。

さて、会社の「業績」が分かったところで、次に見るべきは会社の「健康状態」です。どれだけ利益を上げていても、財政状態が不健全では意味がありません。

次回、『第8回:会社の健康診断書!貸借対照表(B/S)のキホン』では、会社の資産や負債の状況を示す「貸借対照表(B/S)」の読み解きに挑戦します。お楽しみに!

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