行政書士への道:憲法・統治機構編 第8回「憲法の番人!違憲審査権の仕組みと課題」

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皆さん、こんにちは!行政書士の勉強、統治機構編もいよいよ大詰めです。 前回は「司法権の独立」について学びましたが、今回はその司法権の中でも特に強力な権限である**「違憲審査権」**について掘り下げていきます。司法が「憲法の番人」と呼ばれる所以であり、憲法学習の集大成ともいえる重要なテーマです。しっかりマスターしていきましょう。

1. 違憲審査権とは?-国民を守る「砦」

まず、「違憲審査権」とは何か、その定義から確認します。 これは、国会が作った法律や、内閣が出す命令などが、国の最高法規である憲法に違反していないかを裁判所が審査し、違反している場合にはその効力を否定できる権限のことです。

この制度は、以下の二つの重要な意義を持っています。

  • 人権保障の砦:国会や政府の行為によって、国民の基本的人権が不当に侵害されないようにチェックする、最後の砦としての役割を果たします。
  • 三権分立の要:司法が、立法(国会)や行政(内閣)の行き過ぎをコントロールするための、極めて重要なチェック機能です。

2. 誰が、何を審査するのか?

では、この強力な権限は、誰が、何を対象に行使するのでしょうか。

2-1. 誰が?-すべての裁判所と「憲法の番人」

憲法第81条は、「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である」と定めています。

ここでのポイントは2つです。

  1. 違憲審査権は、最高裁判所だけでなく、地方裁判所などの下級裁判所を含むすべての裁判所が持っています。
  2. ただし、最終的な判断を下す権限は最高裁判所にあります。このため、最高裁判所は**「憲法の番人」**と呼ばれているのです。
2-2. 何を?-審査の対象

憲法81条は、審査の対象を「一切の法律、命令、規則又は処分」と定めています。具体的には以下のものが含まれます。

  • 法律:国会が制定するもの
  • 命令:内閣が制定する政令など
  • 規則:最高裁判所規則や議院規則など
  • 処分:行政処分など
  • その他:判例により、地方公共団体の条例も対象とされています。

また、国会が法律を作るべき義務を怠った**「立法不作為」**も違憲審査の対象となることがあります。

3. 日本のスタイル-アメリカ型の「付随的違憲審査制」

違憲審査のやり方には、世界的に見て大きく2つのタイプがあります。

タイプ司法裁判所型(付随的違憲審査制)憲法裁判所型(抽象的違憲審査制)
採用国アメリカ、日本ドイツ、イタリアなど
審査機関通常の裁判所(最高裁、地裁など)憲法問題専門の「憲法裁判所」
審査の仕方具体的な訴訟事件を解決するのに必要な範囲で、憲法判断を行う具体的な事件がなくても、法律そのものが合憲か審査できる
主な目的個人の権利救済憲法秩序の維持

日本が採用しているのは、アメリカ型の**「付随的違憲審査制」です。これは試験でも非常に重要なポイントで、日本では具体的な事件・争いごとが裁判所に持ち込まれない限り、裁判所は法律が憲法違反かどうかを判断できない**、ということを意味します。

4. 違憲判決の効力-法律はすぐ無効になる?

最高裁判所がある法律を「違憲だ」と判断した場合、その法律はどうなるのでしょうか。これには学説上の対立があります。

  • 個別的効力説(通説) 違憲判決の効力は、その裁判の当事者間でのみ適用が否定される、という考え方。法律自体が自動的に無効になるわけではなく、その改廃は国会の仕事とされます。付随的審査制を採る日本では、この説が通説です。
  • 一般的効力説 違憲判決が出されたら、その法律は一般的に誰に対しても無効になる、という考え方。

実際の運用では、最高裁で違憲判決が出ると、国会が速やかに法律を改正・廃止することが通例となっています。

5. 日本の現状と課題-なぜ違憲判決は少ないのか?

5-1. 「司法消極主義」とは

日本の最高裁判所は、これまで法律を違憲とした判決の数が少なく、**「司法消極主義」**の立場にあると批判されることがあります。これは、裁判所が違憲判断に慎重な姿勢を指します。国民から直接選ばれたわけではない裁判官が、国民の代表である国会の判断を覆すことには謙抑的であるべき、という考え方が背景にあります。

5-2. 「統治行為論」-司法が判断を避けるとき

司法消極主義の代表的な現れが**「統治行為論」です。これは、「国の統治の基本に関する高度に政治的な問題については、裁判所は憲法判断をしない」**という理論です。

行政書士試験では、この理論が適用された以下の2つの判例が超頻出です。

  • 苫米地事件(1960年):衆議院の解散の有効性について、高度に政治的な行為であるとして司法審査の対象外とした。
  • 砂川事件(1959年):日米安全保障条約の合憲性について、これも高度な政治性を有するとして、司法審査には原則として馴染まないと判断した。

本日のまとめ

  • 違憲審査権は、司法が立法・行政をチェックし、人権を守るための重要な権能。
  • 日本の制度は、具体的な事件の中で判断する**「付随的違憲審査制」**である。
  • 最高裁判所は**「憲法の番人」**として最終的な判断を下す。
  • 違憲判決の効力は、その事件にのみ及ぶ**「個別的効力説」**が通説。
  • 「司法消極主義」や「統治行為論」(苫米地事件、砂川事件は必出!)により、違憲判断には慎重な傾向がある。

統治機構編の学習、お疲れ様でした!国会、内閣、裁判所の三権がどのように機能し、互いにチェックし合っているのか、その全体像が見えたのではないでしょうか。

次回からは、私たちの生活により身近な**「地方自治」**の分野に入っていきます。引き続き頑張りましょう!

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