行政書士への道:「憲法改正とは?手続きと主要な論点を学ぶ」

今回は、国の最高法規である憲法そのものを変更する**「憲法改正」**について解説します。国のルールの根本に関わる話であり、行政書士試験でも必須の知識です。しっかり押さえていきましょう。

1. 憲法改正の基本-国のルールブックを変えること

「憲法改正」とは、その名の通り、憲法の条文を公式に改善・訂正することを指します。

なぜ法律と違って、憲法には特別な改正手続きが必要なのでしょうか。それは、憲法が**「国家権力を縛るための最高法規」だからです。時の権力者が自分たちに都合の良いように安易にルールを変えられないよう、わざと厳格な手続きが定められているのです。このような憲法を「硬性憲法」**と呼び、日本国憲法もその一つです。

2. 日本国憲法の改正手続き(憲法96条)

日本国憲法を改正するには、以下の2つの非常に高いハードルを越える必要があります。

ステップ1:国会による発議

まず、国会で「憲法をこのように変えませんか?」という提案(発議)を行う必要があります。

  • 原案提出:衆議院で100人以上、参議院で50人以上の議員の賛成が必要です。
  • 議決:衆議院と参議院、それぞれの本会議で、「総議員」の「3分の2以上」の賛成で可決されなければなりません。

「欠席者や棄権者を除く過半数」といった通常の法律の議決要件より、はるかに厳しいことがわかりますね。

ステップ2:国民投票による承認

国会での発議が無事可決されると、次にボールは主権者である私たち国民に渡されます。

  • 投票権:満18歳以上の日本国民に与えられます。
  • 承認:国民投票が行われ、**賛成票の数が、有効投票総数(賛成票+反対票)の「過半数」**を超えた場合に、国民の承認があったものとされます。

この2つのステップを経て、初めて憲法は改正され、天皇が国民の名において公布します。ちなみに、日本国憲法は1947年の施行以来、一度も改正されていません。

3. 憲法改正をめぐる主な論点

現在、憲法改正については様々な議論があります。ここでは主要な3つの論点を簡潔に紹介します。

論点①:96条改正(手続きを簡単にするか?)

  • 改正賛成派の主張:「そもそも国会の3分の2のハードルが高すぎて、国民投票にかけるかどうかの議論すらできないのは問題だ。もっと国民が意思表示する機会を増やすべき。」
  • 改正反対・慎重派の主張:「憲法は国の基本であり、権力者が安易に変えられないようにするのが立憲主義の基本。手続きの緩和は、多数派による人権侵害の危険を高める。」

論点②:9条改正(自衛隊をどう位置づけるか?)

  • 現状の憲法9条には「自衛隊」の文言がありません。そこで、その存在や役割を憲法にきちんと明記すべきだ、という議論があります。ただし、その場合でも9条1項(戦争の放棄)と2項(戦力の不保持)は維持すべき、とする意見など、党派によって考え方は様々です。

論点③:緊急事態条項(災害時に政府の権限を強めるか?)

  • 大規模な災害や有事の際に、迅速に対応できるよう、内閣に権限を集中させ、法律と同じ効力を持つ政令を出せるようにする「緊急事態条項」を創設すべきだ、という議論があります。
  • これに対し、平時のうちに法律で備えておけば十分であり、権力濫用の危険性が高く、人権が大幅に制限されかねない、という強い反対意見もあります。

本日のまとめ

  • 憲法改正は、権力を縛る最高法規を公式に変更する手続きで、日本は厳格な**「硬性憲法」**。
  • 手続きは2段階:①国会発議(各議院の総議員の3分の2以上)と、②国民投票(有効投票の過半数)
  • 憲法96条の条文、特に**「総議員」「3分の2」「過半数」**という数字は、試験対策として正確に覚えること。
  • 主な論点として、96条(手続き緩和)9条(自衛隊)緊急事態条項などがある。

憲法改正は、国の形を左右する、国民一人ひとりに関わる非常に重要な問題です。様々な意見がありますが、まずはその手続きのルールを正確に理解することが、学習の第一歩ですね。

Comments

No comments yet. Why don’t you start the discussion?

    コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です