「来月の住宅ローン、どうしよう…」 「子どもの学費だけは、なんとかしないと…」
もし、あなたが明日、病気やケガで働けなくなったら。 そんな「もしも」の事態を想像したことはありますか?
こんにちは。40代の会社員として、日々お金の勉強に励んでいる、ブログ主です。
もし、こんなことがあったら。
順風満帆な会社員生活を送っていた友人A(45歳)が、過労で倒れ、長期入院を余儀なくされました。幸い命に別状はなかったものの、医師からは「少なくとも半年は療養が必要です」との診断。
Aは蒼白になりながらも、私にこう言いました。 「大丈夫。万が一のために、数年前に『就業不能保険』に入ったから、生活費はそれでなんとかなるはずだ…」
しかし、彼のその期待は、数週間後に裏切られることになります。 保険会社からの返答は「保険金のお支払いは、現時点ではできません」という、あまりにも非情なものでした。
なぜ、Aは保険に入っていたのに、すぐにお金を受け取れなかったのか?
実は、彼が陥ったのは、多くの人が見過ごしている「就業不能保険の落とし穴」でした。この記事では、Aの事例をもとに、あなたが“もしも”の時に本当に困らないための、お金の知識を徹底解説します。
【第1章】不都合な真実。就業不能保険で「すぐにお金がもらえない」3つの落とし穴
「働けなくなった時の生活費を保障する」はずの就業不能保険。しかし、その“いざ”という時に、Aを待ち受けていたのは厳しい現実でした。彼が直面した「すぐにもらえない」理由。それは、大きく分けて3つの落とし穴にありました。
▼落とし穴1:【時間】想像以上に長い「免責期間」という待機時間
Aが加入していた保険には「免責期間180日」という条件がありました。これは「就業不能状態になってから、180日間は保険金を支払いませんよ」という意味です。つまり、半年間は収入が途絶えるにもかかわらず、保険からのサポートは一切ないのです。
多くの就業不能保険には、この「免責期間」が設定されています。60日や90日、Aのように180日というプランも珍しくありません。この期間の生活費は、すべて貯蓄で賄う必要があるのです。あなたの保険証券に書かれている「免責期間」が何日か、ご存知ですか?
▼落とし穴2:【条件】保険会社が定める厳しい「就業不能状態」の定義
次にAを苦しめたのが、「就業不能状態」の定義です。彼は退院後、医師の指示で「在宅療養」をしていました。しかし、彼の保険の支払条件には「入院していること」が必須だったのです。
「働けない状態」の定義は、保険会社や商品によって全く異なります。
- 常に医師の指示のもと、入院または在宅療養している状態
- 国民年金の障害等級1級または2級に認定された状態
- 公的介護保険制度の要介護2以上に認定された状態
など、そのハードルは私たちが想像する以上に高い場合があります。「働けない=お金がもらえる」という単純な話ではないのです。
▼落とし穴3:【対象外】見過ごされがちな「精神疾患」の扱い
現代社会において、うつ病などの精神疾患は誰にでも起こりうる病気です。しかし、多くの就業不能保険では、この精神疾患が保障の対象外、もしくは支払期間が大幅に短縮される(例:最大2年間までなど)ケースがほとんどです。身体的なケガや病気は手厚く保障しても、心の病による就業不能はカバーされない可能性があるという事実は、必ず知っておくべき重要なポイントです。
【第2章】会社員なら絶対に知るべき最強のセーフティーネット「傷病手当金」
「免責期間中は貯蓄で耐えるしかないの?」 「民間の保険は、こんなに厳しいの?」
そんな不安を感じたあなたにこそ、知ってほしい制度があります。それが、**日本の会社員・公務員が使える最強の公的保障「傷病手当金」**です。
▼傷病手当金とは?
これは、あなたが加入している健康保険(協会けんぽ、組合健保など)から支給されるお金です。業務外の病気やケガで会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に、生活を保障するために設けられています。
▼驚くほど手厚い、その内容
驚くべきはその手厚さです。支給される金額は、ざっくり言うと**「あなたのお給料の、およそ3分の2」**。これが、最長で通算1年6ヵ月間にわたって支給されます。
例えば、月収30万円の人なら、約20万円が毎月振り込まれる計算です。Aさんのケースで言えば、保険の免責期間である180日間(6ヵ月)、彼を支えてくれたのは、まさにこの傷病手当金でした。
▼ただし、注意点も
この強力な制度にも注意点があります。
- 対象者:あくまで会社の健康保険に加入している人が対象です。自営業やフリーランスの方が加入する国民健康保険には、原則としてこの制度はありません。
- 申請が必要:自動的にもらえるものではなく、医師や会社に書類を書いてもらい、自分で申請手続きをする必要があります。
とはいえ、この制度を知っているか知らないかで、万が一の時の安心感は天と地ほどの差があります。まずは、ご自身が傷病手当金の対象者であるかを確認することが、第一歩です。
【第3章】あなたに必要なのはどれ?「就業不能保険 vs 所得補償保険 vs 医療保険」徹底比較
「傷病手当金があるなら、民間の保険は不要?」いえ、そうとも限りません。公的保障を「土台」とした上で、足りない部分を民間の保険で「上乗せ」するのが賢い考え方です。
ここで混同しがちな3つの保険を、役割の違いで整理してみましょう。
保険の種類 | 主な目的 | 保障の対象 | ポイント |
医療保険 | 治療費のカバー | 入院・手術・通院などにかかる医療費 | 生活費は保障されない。「治療」のためのお金。 |
就業不能保険 | 長期の生活費のカバー | 病気やケガで長期間働けない状態の生活費 | 保障期間が長い(60歳までなど)。免責期間も長く、支払条件が厳しい傾向。 |
所得補償保険 | 短期の生活費のカバー | 病気やケガで短期間働けない状態の生活費 | 保障期間が短い(1〜2年)。免責期間も短く(7日など)、比較的保険金を受け取りやすい。 |
このように、目的が全く異なります。「医療保険」はあくまで治療費を補うもの。「就業不能保険」や「所得補償保険」が、傷病手当金と同じく**生活費(=所得)**を補うものです。
【第4章】【結論】立場別・40代からの最適解。賢い「お金の備え」構築プラン
さて、ここまでの情報を踏まえ、あなたの立場に合わせた「最適解」を考えていきましょう。
▼プランA:会社員・公務員の方へ
あなたの最大の強みは「傷病手当金」です。この土台を最大限に活用しましょう。
- 基本戦略:最初の1年6ヵ月は傷病手当金で生活を維持する。
- 考えるべきリスク:
- 傷病手当金で不足する「給料の3分の1」の減少分
- 1年6ヵ月を超えても、働けない状態が続くリスク
- 最適解:
- 貯蓄で備える:まずは、生活費の3〜6ヵ月分の貯蓄を確保し、傷病手当金の申請期間や給料減に備える。
- 保険で上乗せ:1年6ヵ月以上の長期リスクに備えたい場合、**「免責期間が1年以上の就業不能保険」**を検討する。免責期間を長く設定することで、保険料を安く抑えられます。
▼プランB:自営業・フリーランスの方へ
傷病手当金というセーフティーネットがないあなたは、民間の保険が「命綱」になります。
- 基本戦略:働けなくなった直後から、自分の力で収入減をカバーする必要がある。
- 考えるべきリスク:短期・長期問わず、働けない期間すべての生活費。
- 最適解:
- 貯蓄を厚くする:会社員以上に、最低でも1年分の生活防衛資金を確保することが理想です。
- 保険を組み合わせる:
- 働けなくなってすぐの収入減には、**免責期間が短い(7日など)「所得補償保険」**で備える。
- 数年以上にわたる長期のリスクには**「就業不能保険」**で備える。支払条件(特に在宅療養が対象か)をしっかり比較検討することが重要です。
【まとめ】不安を「安心」に変える、はじめの一歩
友人Aは、傷病手当金の存在を知っていたおかげで、なんとか生活を立て直し、今は復職に向けてリハビリに励んでいます。彼は言います。 「保険に入っているというだけで安心しきっていた。本当に怖いのは、正しい知識がないことだね」
この記事を読んでくださったあなたは、もう大丈夫です。 やみくもに不安がるのではなく、
- 公的保障(傷病手当金)が使えるか確認する
- 足りない部分を、貯蓄や民間の保険でどう補うか考える
この順番で、冷静に備えることが大切です。
さあ、まずはあなた自身の保険証券を引っ張り出して、「免責期間」と「支払条件」を確認してみてください。その小さな一歩が、あなたと、あなたの大切な家族の未来を守る、最も確実な方法なのですから。
【免責事項】 本記事は、保険や公的制度に関する情報提供を目的としており、特定の金融商品の販売や勧誘を目的とするものではありません。保険商品の加入や見直しに関する最終的な決定は、保険の専門家等にご相談の上、ご自身の判断と責任において行っていただきますようお願いいたします。