
皆さん、こんにちは!
あなたの周り、あるいはあなた自身の中に、こんな「思い込み」はありませんか? 「あの先生は、絶対に俺のこと嫌ってる」 「この勉強法が、絶対に一番効率的だ」 「〇〇(グループ名)が好きなやつは、センスがない」
私たちは日常生活の中で、知らず知らずのうちに「絶対」という言葉を使って、物事を断定してしまいがちです。しかし、その「絶対に正しい」という強い思い込みこそが、あなたの知性の成長を妨げる、恐ろしい「ワナ」だとしたら…?
300年前に生きたアイザック・ワッツは、この「独断的な精神」を知性の最大の敵の一つだと考え、厳しく警告しました。今回は、自分の考えに固執してしまう「心の監獄」から脱出し、常にアップデートし続ける柔軟な思考を手に入れる方法を探っていきましょう。
「独断」という名の、心地よい監獄
ワッツが言う「独断的な精神」とは何でしょうか。それは、**「確固たる根拠なしに意見を固定せず、常に間違いの可能性を意識し、断定的な表現を避ける」**べきだ 、という教えの正反対の状態。つまり、十分な証拠もないのに「自分の考えが絶対に正しい」と信じ込み、他の意見や新しい情報に一切耳を貸さなくなってしまう精神状態のことです 。
このワナが恐ろしいのは、多くの場合、本人が気づかないうちにハマってしまうことです。私たちは皆、家族や友人、国や所属するグループから、様々な価値観や意見を受け継いでいます。そして、「ほとんどの人は家族、国、または党派の意見を持って生まれており、その真実性を問わない傾向がある」 のです。
「みんながそう言っているから」「昔からこう決まっているから」という理由だけで、その意見を自分の「絶対」にしてしまう。その瞬間、あなたは自分自身を「独断」という名の、心地よい監獄に閉じ込めてしまっているのかもしれません。
「絶対」と言った瞬間に、成長は止まる
なぜ、独断的な考え方がそこまで危険なのでしょうか。ワッツは、「独断的な精神はさらなる知識の向上を妨げ、精神の傲慢さにつながる」 と指摘しています 。
「自分は絶対に正しい」 「自分の意見は完璧だ」 そう思った瞬間、人は学ぶことをやめてしまいます。なぜなら、自分と違う意見はすべて「間違い」か「価値のないもの」に見えてしまうからです。新しい本を読んでも、人の話を聞いても、「どうせ自分の考えが正しいし」と、心がシャッターを下ろしてしまいます。
これは、あなたの「知性のOS」が完全にフリーズしてしまった状態です。もはや新しいデータを受け付けず、アップデートすることもできません。ワッツは、ラテン語の「Sic sentio, sic sentiam」(私はそう信じ、そう信じ続ける)という頑固な態度を、**「魂の監獄」**であると厳しく批判しました 。自分の意見に固執することは、自分自身を、成長の可能性から切り離してしまう行為なのです。
「自分を疑う勇気」こそが、最強のアップデートキー
では、どうすればこの「魂の監獄」から脱獄し、フリーズしたOSを再起動できるのでしょうか。必要なのは、特別な才能ではありません。たった一つの、しかし最も大切な**「勇気」です。それは、「自分の意見を疑う勇気」**です。
ワッツは、本当の賢さとは、たくさんのことを知っていることではなく、「私たちは誤りを犯しやすい解釈者である」 と認め、「誤りを撤回することに抵抗しない」 謙虚さと勇気を持つことだと説きました。自分の間違いを認めることは、敗北ではありません。それは、昨日までの自分より賢くなるための、最も知的な「勝利」なのです。
この勇気を育てるために、明日からできる3つのトレーニングを紹介します。
- 「絶対」という言葉を封印する まずは言葉から変えてみましょう。「絶対にこうだ」と言う代わりに、「今のところ、私はこう思う」「私の知る限りでは、こうだ」という、「断定的な表現を避ける」 習慣をつけます。この小さな「隙間」が、新しい情報が入ってくるための心の余白になります。
- あえて「敵」の意見を探してみる 自分が「正しい」と信じている意見(A)があるなら、あえて「Aは間違っている」と主張する人の意見(B)を、ネットや本で探してみてください。ワッツが言うように、「真理を探求する間は、質問のどちらの側にも公平な態度を保」 とうと努めるのです。Bの意見に納得する必要はありません。ただ、「世の中には、こういう見方もあるのか」と知るだけで、あなたの凝り固まった思考は、ほぐれ始めます。
- 「間違ってました!」を練習する もし、新しい証拠や説得力のある意見に出会い、「あ、自分の考え、間違ってたかも」と気づいたら、それを隠したり、ごまかしたりしないでください。ワッツは、「将来、より良い証拠が現れた場合には、たとえ重要な点であっても意見を変える準備が必要」 だと言います。友達や家族に、「この前の件、私が間違ってたみたい。ごめん!」と素直に言ってみましょう。その一言は、あなたの弱さではなく、知的な誠実さと強さの証として、周囲の信頼を勝ち取ることにもつながります。
まとめ:最強の知性とは「変わり続けられる」知性だ
今回は、「絶対」という独断的な考え方が、いかに私たちの成長を妨げる「魂の監獄」であるか、というお話をしました。
ポイントを振り返ってみましょう。 第一に、「絶対に正しい」という思い込みは、新しい学びを拒絶し、知性の成長を止めてしまう危険なワナであること 。 第二に、その多くは、自分が所属する集団の意見を無批判に受け入れることから始まっていること 。 そして第三に、この監獄から脱出する鍵は、**「自分は間違っているかもしれない」と常に疑い、間違いを素直に認める「勇気」**を持つこと 。
最強の知性とは、たくさんの知識を詰め込んで変わらない「岩」のようなものではありません。それは、新しい水(情報)を柔軟に受け入れ、形を変えながら流れ続ける「川」のようなものです。自分の意見を疑う勇気を持って、あなたの知性を、常に新しく、しなやかにアップデートし続けていきましょう。
【明日からできるアクションプラン】 あなたが「絶対にこうだ」と強く信じていること(好きなアーティスト、勉強法、将来の夢、何でも構いません)を一つ、思い浮かべてください。そして、その意見に対する「反対意見」や「弱点」を、ネットで5分だけでいいので調べてみましょう。 「〇〇 批判」「〇〇 デメリット」といった言葉で検索するのです。その意見に同意する必要はありません。ただ、「世の中には、こんな見方もあるんだな」と知るだけで、あなたの「魂の監獄」の壁には、確実にヒビが入るはずです。

