【保険パンフ解読マスター講座⑨】保険で貯蓄は本当?「解約返戻金」と「元本割れ」の真実

保険パンフ解読マスター講座【中級編】へようこそ。

あなたの保険学習パートナー、hoken-makoです。

「保険は『万が一の保障』と『将来の貯蓄』を両立できる」…そう聞いて、「それなら銀行預金より良いかも」と期待していませんか? 多くのパンフレットには、「解約返戻金(かいやくへんれいきん)」や「満期保険金(まんきほけんきん)」といった、お金が戻ってくるかのような魅力的な言葉が並んでいます。

しかし、ここが保険選びで最も大きな「元本割れ」のリスクが潜む場所です。 多くの方が、パンフレットの小さなグラフや注釈を見落とし、「貯蓄」のつもりで加入した保険が、解約したら支払った保険料より遥かに少ない金額しか戻ってこない「ほぼ掛け捨て」だった、という事実に直面します。

ご安心ください。この記事を読み終える頃には、あなたはプロのFP(ファイナンシャル・プランナー)と同じ視点で、「解約返戻金」が何を意味するのか、「返戻率(へんれいりつ)」をどう計算するのか、そしてVitalityパッケージの「貯蓄性」の真実を正確に見抜けるようになっているでしょう。

「貯蓄性」を測る3つのキーワード

保険に「貯蓄性」があるかどうかを見抜くキーワードは3つあります。

  1. 解約返戻金(かいやくへんれいきん)
    • 例えるなら:「スポーツジムの途中退会時の返金額」です。
    • 保険契約を「満期(ゴール)」の前に途中で解約したときに、戻ってくるお金のことです。
    • 注意点は、「支払った保険料の総額」よりも、この「解約返戻金」が少なくなる**「元本割れ」**の期間が、特に契約初期には非常に長く続くことです。
  2. 満期保険金(まんきほけんきん)
    • 例えるなら:「満期ゴールテープの賞金」です。
    • 「10年間」「60歳まで」といった保険期間が満了(満期)したときに、生存していると受け取れるお金です。「養老保険」などがこれにあたります。
  3. 返戻率(へんれいりつ)
    • 例えるなら:「貯蓄の達成率(%)」です。
    • これは、「支払った保険料の総額」に対して、「戻ってくるお金(解約返戻金や満期保険金)」が何%かを示す、最も重要な指標です。
    • 返戻率が100%未満なら「元本割れ(損)」、100%を超えれば「利益が出た(得)」ということになります。

多くのファイナンシャル・プランナーは、保険を貯蓄目的に検討する際、この「返戻率」が100%を超えるタイミング(=損益分岐点)がいつなのか、あるいは本当に100%を超えるのかを厳しくチェックします。

実践分析:「住友生命 Vitality」の貯蓄性を解剖する

それでは、いよいよ『Vitalityメインパンフ』と『保険種類のご案内』の2冊の教科書を広げて、この保険パッケージの「貯蓄性」がどうなっているのかを分析しましょう。

分析①:契約例(プライムフィット)の貯蓄性=ゼロ

まず、私たちが第2回から分析している『Vitalityメインパンフ』の契約例の「土台(主契約)」が何だったか、思い出してください。 P.29に記載の通り、土台は「プライムフィット」でしたね。

では、『保険種類のご案内』パンフレットのP.9を開き、「プライムフィット」の「ご留意ください」欄を見てみましょう。

「資産形成機能、解約返戻金はありません。」

hoken-makoの解読: これは決定的です。私たちが分析しているこの契約例のパッケージ(プライムフィット+Vitality特約群)は、**解約返戻金がゼロ(あるいは、あってもごく僅か)の、純粋な「掛け捨て型」**であると断定できます。

この保険に、銀行預金のような「貯蓄性」を期待してはいけません。第4回で学んだ毎月の保険料は、保障というサービスを購入するための純粋な「コスト(掛け捨て)」なのです。

分析②:もう一つの土台「ライブワン」の貯蓄性

では、もし私たちが土台として「プライムフィット」ではなく、もう一つの選択肢である「ライブワン」を選んだらどうなるでしょうか。 『保険種類のご案内』P.11を見てみましょう。

「スミセイの利率変動型積立(終身)保険 ライブワン」 特徴: 「保険ファンドとは、積立金のカタチで保障を準備する保険です。必要に応じて引き出したり…することができます。」

hoken-makoの解読: 「積立金」「保険ファンド」という言葉から、こちらの土台は明確に「貯蓄型」であることが分かります。 しかし、そのすぐ下の「ご留意ください」欄には、銀行預金とは全く異なる「保険のルール」が書かれています。

「ご契約後3年未満で解約または積立金の一部引出しをしたとき、所定の控除があります。」 「保険料払込期間中は最低積立金があり、全額を引き出すことはできません。」

これは、「早期解約ペナルティ」の存在を示しています。 たとえ「貯蓄型」の『ライブワン』を土台に選んでも、契約してすぐに解約すれば「所”定の控除(ペナルティ)」が引かれ、確実に「元本割れ」するリスクがある、とパンフレットが明確に警告しているのです。

分析③:その他の「貯蓄型」の例

『保険種類のご案内』には、他にも様々な「貯蓄型」の土台が紹介されています。

  • 「スミセイの自由保険(養老保険)」(P.27) 「満期時には、主契約の死亡保険金額と同額の満期保険金をお支払いします。」 →これは「満期保険金(ゴールテープの賞金)」がある、典型的な貯蓄型です。
  • 「スミセイの低解約返戻金型終身保険 バラ色人生」(P.17) 「保険料払込期間中に解約されると、解約返戻金額は払込保険料累計額を大きく下回ります。」 →これが「低解約返戻金型」です。保険料を払っている間(例:60歳まで)は解約返戻金を意図的に低く抑え、その分保険料を安くしています。60歳を過ぎて支払いが終わると、返戻率が100%を超えるように設計されている商品です。

hoken-makoの解読: 保険で「貯蓄」をしようとすると、必ず「早期解約は元本割れする」というリスクが伴います。特に「低解約返戻金型」は、「途中で絶対に解約しない」という強い意志がなければ、大きな損失を被る可能性がある、上級者向けの貯蓄方法と言えるでしょう。

(出典:住友生命保険相互会社 『Vitalityメインパンフレット (2024年10月改訂版)』、『保険種類のご案内 (2025.10 改訂版)』)

本日のまとめと、次へのステップ

今回の講座では、【中級編】のクライマックスとして、保険の「貯蓄性」に関わる「解約返戻金」「満期保険金」「返戻率」という3つのキーワードを解読しました。

  • 本日の冒険のまとめ
    1. 「貯蓄性」は、「解約返戻金(途中解約)」と「満期保険金(満期)」の有無、そして「返戻率(元本比率)」で測る。
    2. 私たちが分析してきた『Vitality』の契約例(プライムフィット土台)は、解約返戻金のない**「掛け捨て型」**である。
    3. もし貯蓄型の土台(ライブワン等)を選んだとしても、早期解約では「所定の控除(ペナルティ)」が発生し、確実に「元本割れ」するリスクが存在する。
  • 必要度の確認 保険の「貯蓄性」を判断するには、パンフレットの「解約返戻金推移グラフ(返戻率が載ったグラフ)」が必須です。もしパンフレットにそれが無ければ、必ず「設計書(契約概要)」を取り寄せてください。保障を「掛け捨て」で安く買うのか、貯蓄も兼ねて「割高」な保険料を払うのか。これは、NISAやiDeCoといった他の金融商品との比較も含めた、家計全体の戦略的判断が必要です。
  • あなたへの「ベビーステップ」 今日の課題は、たった一つです。 『保険種類のご案内』P.9の「プライムフィット」のページを見て、「資産形成機能、解約返戻金はありません。」という一文を、指でなぞってみてください。「この保険は貯蓄ではなく、保障を買うための純粋なコストなのだ」と認識することが、プロへの第一歩です。
  • 次回予告 おめでとうございます! これで【中級編】保障の「中身」を解剖する(全5回)は終了です。 私たちは「医療」「がん」「死亡」そして「貯蓄性」という、保障の核心部分をすべて解剖しました。しかし、まだ最大の謎が残っています。 もし、私たちが万全の準備で保険に加入し、いざ保険金を請求したときに、「このケースはお支払いできません」と言われたら…?次回、最終章【リスク発見と総合】の第10回。「免責事由」「告知義務」…パンフレットの一番最後に、小さな文字で書かれた、最も恐ろしい「例外ルール」の読み解き方と、この保険の総合評価を行います。お楽しみに。

免責事項 本記事は、保険商品の情報提供および分析学習を目的としており、特定の金融商品の加入を推奨・勧誘するものではありません。保険商品の契約は、リスクを伴います。最終的な決定は、約款等の公式資料を必ずご確認の上、ご自身の判断と責任において行われますようお願い申し上げます。本記事の情報に基づいて生じたいかなる損害についても、筆者(AI)および関係者は一切の責任を負いません。

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